DX推進スキル標準は、DXを進める人材の役割(ロール)と身につけるべきスキルを定めた、経済産業省とIPA(情報処理推進機構)の指針です。2026年4月16日に公開されたver.2.0で、データマネジメント類型が新しく加わり、人材類型は5つから6つになりました。DX人材の育成計画や採用要件を作るときは、6類型の中から自社に要る類型とロールを選び、共通スキルリストで今の社員との差を測る使い方ができます。

この記事は2026年10月時点の情報です。最新の内容はIPAの公式ページ「デジタルスキル標準」でご確認ください。

この記事の答え

  • DX推進スキル標準は、DX推進人材の役割とスキルを定めた国の指針で、2026年4月16日のver.2.0で6類型になった
  • 6類型すべてを社内に揃える必要は無く、何を変えるかを決める類型から社内に置き、残りは外部に頼る範囲として決める
  • 自社の現状を把握し、要る類型とロールを選び、共通スキルリストで不足を洗い出してから、育成と採用に振り分ける

DX推進スキル標準とは:デジタルスキル標準の2つの柱の1つ

DX推進スキル標準(DSS-P)は、デジタルスキル標準を構成する2つの標準のうち、DXを推進する人材に向けたものです。デジタルスキル標準は経済産業省とIPAが策定し、個人の学習や企業の人材の確保・育成の指針と位置づけられています。

DXリテラシー標準との違い

DXリテラシー標準(DSS-L)は全ビジネスパーソン向け、DX推進スキル標準はDXを推進する人材向けで、対象者が違います。全社員に求める基礎はDXリテラシー標準で、推進役に求める専門性はDX推進スキル標準で考えます。

標準 対象となる人 定めている内容
DXリテラシー標準 すべてのビジネスパーソン DXに関する知識を身につけ、変革に向けて自分から行動できるようになるための考え方とスキル
DX推進スキル標準 DXを推進する人材 6つの人材類型、類型ごとのロール、ロールごとに求めるスキルと重要度

デジタルスキル標準は、2023年8月と2024年7月に、生成AIの広がりを踏まえた改訂が行われています。生成AIを日々の業務で使う社員の教育は、まずDXリテラシー標準の範囲で考えると整理しやすくなります。

DX人材・DX推進人材とは何を指すか

DX推進人材とは、DX推進スキル標準の6類型のどれかの役割を担い、自社の業務や事業をデジタル技術で変える中心になる人のことです。広い意味のDX人材には、DXリテラシー標準の水準を身につけた全社員も含めて呼ぶことがあります。AI人材やIT人材との違い、AI人材を育てる手順は別の記事で詳しく扱っているため、ここではDX推進スキル標準での区分だけを押さえます。

DX推進スキル標準の6つの人材類型と主なロール

DX推進スキル標準は、DX推進人材の役割を6つの人材類型に分け、類型ごとにさらに細かいロールを定めています。IPAは、類型どうしは指示を出す側と受ける側の関係ではなく、複数の類型が連携して進めることが大事だとしています。

人材類型 担う役割 ver.2.0で確かめられるロール
ビジネスアーキテクト 変革で実現したい目的を決め、経営の視点で事業の形と業務の流れを設計し、関係者をまとめて成果まで引っ張る ビジネスアーキテクト、ビジネスアナリスト、プロダクトマネージャー
デザイナー 事業・顧客・伝え方の視点をまとめ、製品やサービスの方針、開発の進め方、製品のあり方を設計する コミュニケーションデザイナーを新設(ほかのロールはIPAの資料で確認)
データサイエンティスト データを使った業務の変革や新しい事業に向けて、データを集めて分析し、AIの仕組みを設計・実装・運用する IPAの資料で確認(データエンジニアはデータマネジメント類型へ移った)
データマネジメント データの安全性と信頼性を保ち、データが続けて流れる仕組みを設計・運用して、組織全体でデータを使えるようにする データスチュワード、データエンジニア、データアーキテクト
ソフトウェアエンジニア 製品やサービスを支えるシステムとソフトウェアを設計・実装・運用する IPAの資料で確認
サイバーセキュリティ 業務を支えるデジタル環境で、サイバー攻撃などの影響を抑える対策を担う IPAの資料で確認

ロールの全一覧は、IPAの資料ダウンロードのページにある「DX推進スキル標準」の分冊版で類型ごとに確かめられます。育成や採用の対象は、人材類型ではなくロールの単位で決めると、求めるスキルが具体的になります。

何を変えるかを決める類型

ビジネスアーキテクト類型とデザイナー類型は、どの業務や事業を、どんな姿に変えるかを決める側の役割です。この2つは外部の支援を受けても、最後の判断は社内の人が持つ必要があります。ver.2.0でビジネスアーキテクト類型にビジネスアナリストとプロダクトマネージャーが並んだことで、業務の課題を分析する人と、製品やサービスを育て続ける人を分けて考えやすくなりました。

データとシステムを作り、守る類型

データサイエンティスト・データマネジメント・ソフトウェアエンジニア・サイバーセキュリティの4類型は、変える内容を形にし、安全に動かし続ける側の役割です。外部に頼りやすいのはこの4類型ですが、データの意味や置き場所を決める仕事は社内に残したほうが、外部の会社を替えても困りません。ver.2.0で独立したデータマネジメント類型が、この仕事を担う役割に当たります。

ver.2.0で何が変わったか:改訂の内容を一覧で確認

ver.2.0の改訂で大きいのは、データマネジメント類型の新設と、ビジネスアーキテクト類型・デザイナー類型のロールの定義の見直しです。IPAのプレス発表に載っている変更点は次のとおりです。

対象 ver.2.0での変更 育成計画で見直す点
人材類型 データマネジメント類型を新設し、ロールはデータスチュワード、データエンジニア、データアーキテクトの3つ データの品質や管理を担う人を、別の役割として計画に入れる
データサイエンティスト類型 データエンジニアのロールをデータマネジメント類型へ移した データエンジニアの育成目標を、移った先の類型の内容で読み直す
ビジネスアーキテクト類型 従来の3ロールを、ビジネスアーキテクト、ビジネスアナリスト、プロダクトマネージャーとして定義し直した 旧ロール名で書いた採用要件や等級の基準を書き換える
デザイナー類型 グラフィックデザイナーを外し、製品やサービスの意義や使い方を伝えるコミュニケーションデザイナーを新設した 伝える役割を担う人を、新しいロールで位置づけ直す
共通スキルリスト 「データ活用」のカテゴリーを「データ整備・活用」に改め、データマネジメントのサブカテゴリーにスキルを6つ新設した データを整える力を、評価や研修の項目に足す
データサイエンティスト類型のスキル AI実装・運用やAIガバナンスなどに関するスキルを加えた AIを組み込んだ仕組みを作り、運用する人の育成目標に入れる
各ロールの重要度 追加・変更したスキルをもとに、既存のロールも含めてスキルの重要度を全体的に見直した 以前の重要度で作った研修の対象者の選び方を確かめ直す

ver.2.0では、ほかにもビジネス変革のカテゴリーのスキルを全体的に見直し、デザインマネジメントの実践に関するスキルの追加や、DXリテラシー標準への追記も行われています。

共通スキルリストの構成と重要度の見方

共通スキルリストは、6つの人材類型に共通するスキルを一覧にし、ロールごとにどのスキルがどれだけ重要かを示した表です。類型ごとに別のスキル表があるのではなく、同じ一覧の上でロールごとに重要度が付く作りなので、ロールを2つ兼ねる人にも当てはめやすくなっています。

自社のスキルの差を測るときの使い方

ver.2.0の共通スキルリストは、IPAの資料ダウンロードのページでExcel版として公開されています。Excel版に今の社員の到達度を書き込む列を足すと、目標とのスキルギャップを一覧で見られます。カテゴリーやスキル項目の数、重要度の表記の意味は、本編のPDFで確かめてから使ってください。

自社の等級に当てはめるときの注意

重要度はロールにとってのスキルの大事さを示すもので、社員の等級や給与の基準そのものではありません。等級の基準に使うなら、重要度の高いスキルから「どの水準まで自分でできれば次の等級か」を自社の言葉で書き足します。標準の表をそのまま評価表にすると、自社の業務で使わないスキルまで評価の対象になります。

DX推進スキル標準を自社の育成計画と採用に活用する手順

DX推進スキル標準を育成計画と採用に活用するときは、現状把握、類型とロールの選定、不足の洗い出し、育成と採用の振り分けの4段で進めます。

順番 手順 やること 主に担う人
1 現状把握 DXで何を変えたいかと、今の社員が担っている役割を書き出す 経営層・DX推進の責任者
2 類型とロールの選定 変えたい内容から、要る人材類型とロールを選ぶ DX推進の責任者
3 不足の洗い出し 共通スキルリストで、選んだロールに要るスキルと今の社員の差を見る 人事・各部門の管理職
4 育成と採用の振り分け 社内で育てる人、採用する人、外部に頼る範囲に分ける 人事・経営層

手順1で自社のDXがどこまで進んでいるかを測るなら、同じく経済産業省とIPAが用意しているDX推進指標の自己診断が使えます。DX推進指標には人材に関する設問も含まれるため、手順1の現状把握の材料になります。

6類型のうちどれから社内に置くか

6類型をすべて社内に揃える必要は無く、事業の段階に合わせて社内に置く類型を増やしていきます。目安は次のとおりです。

事業の段階 社内に置く類型 外部に頼りやすい類型
DXの着手前 ビジネスアーキテクト(何を変えるかを決める人) ほかの5類型は、必要になった時点で外部に頼る
業務をデジタル化している ビジネスアーキテクト、データマネジメント ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ
データで業務や商品を変える 上の2類型に加えて、データサイエンティスト ソフトウェアエンジニアの開発作業、サイバーセキュリティの専門的な診断
デジタル製品を自社で提供 6類型すべてを社内で持つことを目指す 繁忙期の開発の人手、専門的な診断

着手前の会社が最初にソフトウェアエンジニアを採用しても、何を作るかを決める人がいなければ仕事が生まれません。外部に頼る範囲を広く取る段階でも、データの定義や置き場所を決める仕事は早めに社内へ移しておくと、外部の会社を替えたときに作り直しになりにくくなります。

迷う類型は、次の3つの問いで1つずつ判断します。

類型ごとに社内に置くか外部に頼るかの判断 6類型のうち1つずつ、3つの問いで社内に置くか外部に頼るかを決める ・類型を1つずつ当てはめ、最初に答えが決まったところで止めます その類型の仕事に、何 を変えるか・どの順で 進めるかを決める判断 が含まれるか 社内に置く ・育成か採用で最初に確保する はい いいえ その類型の仕事が、1年 を通して毎月発生する か 外部に頼る ・案件ごとに契約し、成果物を社内に残す いいえ はい 近いスキルを持つ社員 が社内にいるか 社内で育てる ・共通スキルリストで不足を洗い出す はい いいえ 採用し、決まるまでは外部に頼る ・採用要件はロールとスキルで書く
何を変えるかを決める仕事は、外部に任せず社内に置きます。

採用要件と研修の選び方に当てはめる

採用要件は、類型の名前だけでなく、ロールと共通スキルリストのスキル項目で書きます。「DX人材」とだけ書いた求人では、応募する側も選考する側も、何ができればよいかが分かりません。研修を選ぶときも、選んだロールで重要度の高いスキルのうち、社内の差が大きいものを扱っているかで比べます。

研修で終わらせず業務を変えられる人を増やす

研修でスキルを学んでも、学んだ人が自分の業務で何かを変える機会が無いと、育成計画は進みません。研修の後に、受講した人が自部門の業務を1つ選んで変える場を用意し、その結果を評価に反映する仕組みまで決めておくと、業務を変えられる人が増えていきます。非エンジニアがAIを作れるようになるまでの段階の設計も、同じ考え方で組み立てられます。

まとめ:DX推進スキル標準はロールの単位で自社に当てはめる

  • DX推進スキル標準は、経済産業省とIPAが定めたデジタルスキル標準の1つで、DX推進人材の役割とスキルを定めている
  • DXリテラシー標準は全ビジネスパーソン向けで、DX推進スキル標準は推進役向けという対象者の違いがある
  • 2026年4月16日のver.2.0で、データマネジメント類型が加わって6類型になり、ビジネスアーキテクト類型とデザイナー類型のロールが見直された
  • 共通スキルリストはロールごとにスキルの重要度を示しており、今の社員とのスキルギャップを測る物差しに使える
  • 6類型すべてを社内に揃えず、何を変えるかを決める類型から社内に置き、残りは外部に頼る範囲として決める

Augueでは、中堅・成長企業のAI内製化に向けて、社内に残す役割の決め方から、業務でAIを作り運用できる人の育成までを伴走で支援しています。ご興味がある方は是非ご相談ください。

社内でAIを使いこなせる人を育てませんか?

Augue AX サービス資料 Service Guide

研修だけで終わらせず、現場の業務で使い続けられる体制づくりまで伴走します。研修の内容と進め方は、サービス資料で紹介しています。

資料をダウンロードする無料相談に申し込む

よくある質問

DX推進スキル標準に対応する資格や試験はありますか?

DX推進スキル標準は役割とスキルを定めた指針で、それ自体は資格でも試験でもありません。IPAは、ロールごとに役立つ情報処理技術者試験を整理した資料を、ver.1.2の関連資料として資料ダウンロードのページに載せています。ver.2.0で増えたロールにどの試験が当たるかは、同じページで最新の資料が出ているかを確かめてから使ってください。

業務部門で生成AIを使っている社員は、どの人材類型に当たりますか?

生成AIを日々の業務で使う社員は、6つの人材類型ではなく、全ビジネスパーソン向けのDXリテラシー標準で考えるのが基本です。一方、AIを組み込んだ仕組みを作り、精度を保ちながら運用し、使い方のルールを決める人は、ver.2.0でAI実装・運用やAIガバナンスのスキルが加わったデータサイエンティスト類型に近くなります。業務部門の中から作る側の人を育てたい場合は、どの業務で作る力が要るかを先に決めると、外部の支援の範囲も決めやすくなります。

社員が少ない会社でも、DX推進スキル標準を使えますか?

使えます。人材類型は役割の区分で、人数や組織の形を決めるものではありません。1人が複数の類型の一部を受け持つ形で当てはめ、その人に足りないスキルだけを共通スキルリストで拾えば十分です。社内で受け持てない類型は、外部の会社に頼る範囲として書き出しておくと、発注のときに何を頼むかがはっきりします。

ver.1.2をもとに作った育成計画は、作り直す必要がありますか?

全部を作り直す必要はありません。見直すのは、データサイエンティスト類型のデータエンジニア、ビジネスアーキテクト類型の旧ロール、デザイナー類型のグラフィックデザイナーを使っていた箇所と、「データ活用」のカテゴリー名を参照していた箇所です。ver.2.0では各ロールのスキルの重要度も全体的に見直されたため、育成の目標に使っていた重要度は新しい共通スキルリストのExcel版と突き合わせてください。