DX推進指標は、経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が用意した、自社のDXがどこまで進んでいるかを関係者で確かめるための自己診断です。2026年の改訂で、設問は「DX認定基準に関する設問」と「望ましい方向性に基づく設問」の2部構成になり、2026年9月18日からはDX推進ポータルのWebフォームで回答・提出する形に変わりました。提出すると5〜10分ほどでベンチマークのレポートを受け取れるため、経営層にDXの進み具合を客観的に示したいときや、DX認定の取得を考えているときの最初の一歩に使えます。
この記事は2026年10月時点の情報です。手続きや設問は改訂されることがあるため、最新の内容はIPAの公式ページ「DX推進指標のご案内」でご確認ください。
この記事の答え
- DX推進指標は、経営ビジョンから人材・ITシステムまでの取り組みを成熟度レベル0〜5で自己診断し、提出すると他社と比べたベンチマークを受け取れる仕組み
- 改訂後はDX認定基準に関する設問と望ましい方向性に基づく設問の2部構成で、DX認定を取っていない企業は認定基準の設問にも答える
- GビズIDを用意し、関係部門で話し合ってレベルを決め、DX推進ポータルのWebフォームから提出する
DX推進指標とは:経済産業省とIPAによる自己診断の仕組み
DX推進指標は、経営幹部・事業部門・DX部門・IT部門が自社のDXの現状と課題を同じ目線で確かめ、次の行動を決めるための自己診断の道具です。経済産業省が指標を定め、IPAが自己診断の結果を受け付けて分析し、提出した企業へベンチマークを返しています。
何を測る自己診断か
DX推進指標が測るのは、デジタル技術をどれだけ使っているかではなく、DXを進める経営の仕組みが社内にどこまで整っているかです。設問は、経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0の柱(経営ビジョン、DX戦略、組織、人材、ITシステム、成果指標、対外的な発信)に沿って並んでいます。
IPAは、関係者が現状とあるべき姿との差、差を埋める対応策について認識をそろえ、行動に移すきっかけにすることを目的に挙げています。点数を付けて評価される試験ではなく、社内で話し合うための共通の物差しです。
2026年の改訂で変わったこと
2026年はDX推進指標が大きく変わった年です。IPAのご案内ページに載っている主な日付は次のとおりです。
| 時期 | 変わったこと |
|---|---|
| 2026年2月13日 | 経済産業省と連携した改訂のお知らせが出た |
| 2026年4月3日 | 改訂版での自己診断結果の受付が始まった |
| 2026年8月3日 | 回答のWebフォーム化と、回答を助けるガイダンス資料の公開が告知された |
| 2026年9月18日 | Webフォームでの回答に切り替わり、Excelファイルでの提出受付が終わった |
Excelのファイルを書いて送る手順で説明している資料は、改訂前の内容です。IPAが配っている「社内共有用DX推進指標設問一覧」のExcelは、社内で回答を話し合うための資料で、提出には使えません。
改訂後のDX推進指標の設問の構成
改訂後のDX推進指標は、デジタルガバナンス・コード3.0の「認定基準」に対応する設問と、「望ましい方向性」に対応する設問の2種類でできています。このほかに、任意で答える定量指標と、回答の最初に入力する企業プロフィールがあります。
DX認定基準に関する設問と望ましい方向性に基づく設問
2種類の設問は、答え方も、答えが要る企業も違います。
| 設問の種類 | 答え方 | 答えが要る企業 |
|---|---|---|
| DX認定基準に関する設問 | 経営ビジョンを策定しているか、などの問いに「している/していない」で答える | DX認定を取っていない企業 |
| 望ましい方向性に基づく設問 | 現在の成熟度レベルを0〜5から選ぶ。3年後の目標レベルも書ける | すべての企業 |
DX認定をすでに取っている企業は、望ましい方向性に基づく設問だけに答えます。認定を取っていない企業は2種類とも答える必要があり、回答する量が増える分、早めに準備を始めます。
7つの柱に沿って並ぶ設問
設問はデジタルガバナンス・コード3.0の柱ごとに並んでいます。社内共有用の設問一覧で確かめた柱と、認定基準の設問で問われる内容は次のとおりです。
| 番号 | 柱 | 認定基準の設問で問われること |
|---|---|---|
| 1 | 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定 | 社会や競争環境の変化を踏まえた、DXに向けた経営ビジョンを策定しているか |
| 2 | DX戦略の策定 | 経営ビジョンを実現するためのDX戦略を策定しているか |
| 3-1 | 組織づくり | DX戦略の中で、推進に必要な体制・組織を示しているか |
| 3-2 | デジタル人材の育成・確保 | DX戦略の中で、必要な人材の育成・確保を示しているか |
| 3-3 | ITシステム・サイバーセキュリティ | ITシステム環境を整える方策を示し、サイバーセキュリティ対策を進めているか |
| 4 | 成果指標の設定・DX戦略の見直し | DX戦略の達成度を測る指標を公表し、経営者の下で課題を把握しているか |
| 5 | ステークホルダーとの対話 | 経営ビジョンやDX戦略を社外に発信しているか |
望ましい方向性に基づく設問は、同じ柱の下に「データや知恵を共有して企業間で連携しているか」のような、より踏み込んだ取り組みを問う形で並びます。改訂後の設問一覧には、以前の解説でよく見る「キークエスチョン」「サブクエスチョン」という区分は出てきません。古い解説を見ながら社内で準備すると、設問の数え方や分け方が合わなくなるため、IPAが今配っている設問一覧を使います。
任意で答える定量指標
定量指標は、DXの成果を数字でつかむための項目で、すべて任意です。設問一覧には、企業全体の中でデジタルサービスが占める割合、決算処理にかかる日数、業務プロセスのデジタル化率、DX人材の数、システム改修の企画からサービス開始までの日数などの例が載っています。
IPAは、例の中から自社に必要な指標を選んで今の値を把握し、3年後の目標値を立てて進み具合を管理する使い方を想定しています。全部を埋めるより、経営層に報告する指標を2〜3個選んで毎年同じ測り方で入れるほうが役に立ちます。
成熟度レベル0〜5の見方
成熟度レベルは0から5までの6段階で、全社の方針があるか、取り組みがどこまで広がって続いているかで分かれます。社内共有用の設問一覧に載っているレベルの書き方は、設問が違っても同じ型でそろっています。
| レベル | 設問一覧での書き方の型 |
|---|---|
| レベル0 | 設問の取り組みをまだ行っていない |
| レベル1 | 全社の方針は無く、一部の部門が散発的に取り組んでいる |
| レベル2 | 全社の方針があり、方針に沿って一部の部門が取り組んでいる |
| レベル3 | 全社の方針があり、各部門で取り組んでいる |
| レベル4 | 全社の方針があり、部門をまたいで全社的・持続的に、見直しながら取り組んでいる |
| レベル5 | レベル4を満たしたうえで、自社の取り組みを超えて社会価値を生んでいる |
隣のレベルとの見分け方
隣り合うレベルの違いは、取り組みの中身の良し悪しではなく、方針の有無と広がり方で決まります。レベル1とレベル2の差は全社の方針があるかどうか、レベル2とレベル3の差は取り組んでいるのが一部の部門か各部門か、レベル3とレベル4の差は部門をまたいで続き見直されているかです。
レベル5を選ぶ場合は判断根拠の記入が必須です。
迷ったら、全社の方針が文書になっているかと、取り組んでいる部門の数を数えてからレベルを選びます。担当者の手応えで選ぶと、部門ごとに付けるレベルがばらばらになります。レベル5を選ぶときは、判断根拠の欄への記入が必須です。
3年後の目標レベルの書き方
望ましい方向性に基づく設問では、現在のレベルとあわせて3年後に目指すレベルと、達成に向けたアクションを書けます。設問一覧では目標レベルとアクションの記入は任意ですが、目標を現在より低く書いた項目があると無効な回答として扱われ、提出できません。
目標は全部の設問で上げる必要はなく、経営ビジョンにつながる設問に絞って1〜2段上げる形が現実的です。全設問で一律にレベルを上げる目標にすると、何から手を付けるかが決まらないまま終わります。
DX推進指標の回答と提出の手順
DX推進指標は、GビズIDを用意し、関係部門で話し合ってレベルを決め、DX推進ポータルのWebフォームで入力して提出する順に進めます。
| 順番 | やること | 使うもの |
|---|---|---|
| 1 | 回答の仕組みと設問の意味を確かめる | IPAの「DX推進指標はじめてガイド」とガイダンス資料 |
| 2 | ログインに使うアカウントを用意する | GビズID(プライム・メンバー・エントリーのいずれか) |
| 3 | 関係部門で話し合い、設問ごとのレベルを決める | 社内共有用DX推進指標設問一覧(Excel) |
| 4 | 企業プロフィールと各設問の回答を入力する | DX推進ポータルのWebフォーム |
| 5 | 提出し、ベンチマークを受け取る | DX推進ポータル |
GビズIDとDX推進ポータルの準備
DX推進ポータルにログインするには、GビズIDが要ります。種類はプライム・メンバー・エントリーのどれでも使えます。GビズIDのアカウントIDはメールアドレスで、IPAからの連絡もそのアドレスに届くため、担当者が異動しても見られるアドレスで作ります。
法人名や担当者の連絡先はGビズIDから取り込まれるため、入力は要りません。業種・規模・売上高・従業員数・所在地・DX認定を取っているかは、企業プロフィールの必須項目として自分で選びます。
関係部門を集めて回答を決める
IPAは、経営幹部・事業部門・DX部門・IT部門などの関係者が集まり、話し合いながら記入することを勧めています。DX推進の担当者が1人で全設問に答えると、自分の部門から見えている範囲だけのレベルになりやすいためです。
担当者が設問一覧のExcelで下書きを作り、意見が割れた設問だけを会議で決める進め方にすると、集まる時間を短くできます。下書きでは、レベルを選んだ理由を一言ずつ書いておくと、会議で何を確かめればよいかがはっきりします。
Webフォームで入力して提出する
DX推進ポータルにログインしたら、「DX推進指標の手続き」を押し、続けて「DX推進指標に回答する」を押すと回答の画面に進みます。必須項目を入力しながら「次へ」で進み、途中で「一時保存」もできます。
提出できないのは、必須項目に入力漏れがある回答と、目標レベルを現在より低く書いた項目がある回答です。送信前の確認画面で未入力の必須項目を確かめ、該当のページに戻って埋めてから送信します。
ベンチマークで他社と比べる
DX推進指標を提出すると、5〜10分ほどでDX推進ポータルからベンチマークのレポートを受け取れます。ベンチマークは提出した企業だけに提供され、ほかの企業や業界と比べて自社のどこが進んでいて、どこが足りないかをつかめます。
個々の企業の診断結果は外部に公表されません。社内共有用の設問一覧では、公表を希望しない場合を除き提出した企業の名前は公表するとしているため、気になる場合は提出前に確かめておきます。
IPAは提出された結果をまとめた分析レポートも毎年公開しており、2026年10月時点で2019年版から2025年版までがそろっています。自社のベンチマークとあわせて読むと、同じ業種や規模の会社がどの柱で止まりやすいかの見当が付きます。IPAは10月と11月をDX推進指標の集中実施期間としています。
DX推進指標を使うメリットと注意点
DX推進指標を使うメリットは、DXの進み具合を社内の共通の言葉で語れるようになることで、注意点はレベルを上げること自体を目的にしないことです。
使うメリット
経営層への報告に、担当者の感想ではなく公的な物差しと他社との比較を使えます。主なメリットは次の4つです。
| メリット | 何ができるようになるか |
|---|---|
| 社内の認識がそろう | 部門ごとに違っていた「DXがどこまで進んでいるか」の見方を、同じ設問と同じレベルの定義で話し合える |
| 次にやることが決まる | レベルの低い柱が見えるため、どこから手を付けるかの議論を始められる |
| 進み具合を毎年追える | 翌年も同じ設問に答えると、レベルの変化で取り組みの進み具合を示せる |
| 他社と比べられる | ベンチマークで、同じ業種や規模の会社と比べた自社の位置が分かる |
注意点
DX推進指標は自己診断なので、甘く付けても厳しく付けても誰にも直されません。高いレベルを付けて見栄えをよくすると、ベンチマークで足りない点が見えなくなり、診断する意味が薄れます。
成熟度レベルは方針の有無と取り組みの広がりを見るもので、取り組みが成果を生んでいるかまでは測れません。成果は、任意の定量指標を自社で選んで毎年測ることで補います。
DX認定との関係
DX推進指標とDX認定は別の手続きですが、DX認定を取っていない企業は、DX推進指標で認定基準に関する設問への回答が必須です。認定基準の設問に「していない」と答えた項目は、DX認定を目指すなら先に整える項目の一覧として使えます。認定の申請そのものは、DX推進指標の提出とは別の手続きです。
診断の結果を次の打ち手につなげる
DX推進指標の結果を打ち手につなげるには、レベルの低い設問を、どの業務のどの工程で止まっているかまで下ろして考えます。たとえば「業務プロセスのデジタル化」のレベルが低いなら、件数の多い業務を3つほど選び、紙や手作業が残っている工程を書き出すと、最初に手を付ける業務が決まります。全社の課題の言葉のままでは、打ち手が予算の話にしかならないためです。
最初の1業務を選ぶときは、AIで処理できる作業の量の問題か、人が決めるべき方針の問題かを分けておくと、着手してから止まりにくくなります。
人材の柱のレベルが低く、推進できる人が社内にいない場合は、外部の支援を受けながら、どの工程を社内に残すかを先に決めます。診断の翌年にレベルを上げたいなら、外部に任せきりにせず、仕組みを説明できる人を社内に1人ずつ増やす計画を目標のアクションに書きます。
まとめ:DX推進指標は関係部門で話し合って回答し、ベンチマークを次の打ち手に使う
- DX推進指標は、経済産業省とIPAが用意した、DXを進める経営の仕組みの成熟度を測る自己診断
- 改訂後はDX認定基準に関する設問と望ましい方向性に基づく設問の2部構成で、DX認定を取っていない企業は両方に答える
- 成熟度はレベル0〜5の6段階で、全社の方針の有無と取り組みの広がりでレベルが分かれる
- 2026年9月18日からはGビズIDでDX推進ポータルにログインし、Webフォームで回答・提出する。Excelでの提出は終わった
- 提出後5〜10分ほどでベンチマークを受け取れ、個々の企業の診断結果は公表されない
- レベルの低い設問は業務の工程まで下ろして、最初に手を付ける1業務を決める
Augueでは、DX推進指標などで見えた課題を業務の工程まで下ろし、AIエージェントで処理する範囲と社内に残す工程を決めて、最初の1業務の仕組みづくりと社内の人材育成を伴走しています。ご興味がある方は是非ご相談ください。
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中小企業や小規模な会社でもDX推進指標を使えますか?
使えます。回答の最初に入力する企業プロフィールでは、規模を大企業・中堅企業・中小企業・小規模事業者・個人事業主から選ぶ形になっており、規模による利用の制限は設けられていません。ベンチマークも業種や規模の情報を使って作られるため、規模の小さい会社ほど、同じ規模の会社と比べてどこが遅れているかをつかむ材料になります。
回答にはどれくらいの時間と人数がかかりますか?
IPAは目安の時間を示していないため、一律の値は出せません。かかる時間を左右するのは、設問の数よりも、レベルの付け方で部門どうしの意見が割れる設問がいくつあるかです。担当者が下書きを作ってから、経営幹部・事業部門・DX部門・IT部門が1回集まって割れた設問だけを話し合う形にすると、集まる時間を短くできます。
回答した内容や提出したことは外部に公表されますか?
個々の企業の診断結果は公表されません。一方、社内共有用の設問一覧では、公表を希望しない場合を除いて提出者の名前を公表するとしています。会社名を出したくない場合は、提出の前に公表を希望しない旨の扱いをIPAの「DX推進指標のご案内」ページで確かめてください。
前の年に提出した結果と比べることはできますか?
できます。DX推進ポータルの「回答データを確認する」から過去に提出したデータを見られます。ただし2020年以前に提出したデータは確認できません。社内共有用の設問一覧にも、回答を一覧のシートへ写して経年比較に使う作りが入っているため、毎年同じ時期に回答して、同じ設問のレベルがどう動いたかを並べると進み具合を示しやすくなります。
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