GASの業務効率化の例は、スプレッドシートへの転記、Gmailでの定期の通知、Googleフォームの回答の集計のように、Google Workspaceの中で毎日繰り返す作業の自動化が中心です。Geminiを組み込むと、メール本文の要約や問い合わせの分類、返信の下書きのように、これまで人が文章を読んで判断していた工程も任せられます。最初に試すなら、Googleのサービスの中で完結し、件数が多く手順が決まった作業を1つ選びます。
2026年10月時点の情報です。実行時間やメール送信数などの上限は、Google for Developersの「Quotas for Google Services」のページで最新の値を確かめられます。
この記事の答え
- GASはスプレッドシート・Gmail・フォーム・カレンダー・ドライブの定型作業を自動化でき、Geminiを組み込むと文章の要約・分類・抜き出し・下書きまで任せられます
- 向いているかの分かれ目は、Googleのサービスの中で完結するか、同じ手順で何度も繰り返すかの2点です
- 自社で試す業務を1つ選び、作る人と保守する人を決めてから試作に入ります
GASでできること・できないこと
GASでできることは、Googleのサービスどうしをつなぎ、決まった手順の作業を決まった時刻や操作をきっかけに自動で動かすことです。GAS(Google Apps Script)は、Googleが提供するプログラムの実行環境で、ブラウザの中でコードを書いて保存すれば、Googleのサーバー上で動きます。
GASが自動化できるGoogleのサービス
GASは、Google Workspaceの主なサービスをほぼすべて操作できます。よく使われるのは次のサービスです。
- スプレッドシート(読み書き・集計・グラフの更新)
- Gmail(送信・受信メールの検索・ラベル付け・下書きの作成)
- Googleフォーム(回答を受けた直後の処理)
- Googleカレンダー(予定の登録・空き時間の確認)
- Googleドライブ(ファイルの作成・移動・名前の付け替え・共有の設定)
- Googleドキュメント・Googleスライド(ひな形への差し込み)
処理を動かすきっかけは「トリガー」で設定します。毎朝9時のような定期実行、フォームが送信されたとき、スプレッドシートが編集されたとき、などを選べます。Slackや会計ソフトのように外部のサービスがAPIを公開していれば、API連携で通知を送ったりデータを取り込んだりすることもできます。
Geminiを組み込むと任せられる作業
Geminiを組み込むと、GASだけでは書けなかった「文章を読んで判断する工程」を任せられます。GASからGemini APIを呼び出し、メールやフォームの文章を渡して結果を受け取る形です。
| 作業 | GASだけの場合 | Geminiを組み込んだ場合 |
|---|---|---|
| 要約 | 文章をそのまま転記する | 長いメールや議事メモを3行にまとめて転記する |
| 分類 | 件名に決まった語があるかで振り分ける | 本文の中身を読んで「見積依頼」「不具合」「その他」に分ける |
| 抜き出し | 決まった書式の欄だけを読み取る | 書き方がばらばらな本文から会社名・数量・納期を拾う |
| 下書き | 決まった文面に名前や日付を差し込む | 問い合わせの内容に合わせた返信の文面を作る |
GASだけで作る場合は、条件を一つずつコードに書く必要があり、書式が少しでも違う文章は扱えません。Geminiは書き方の揺れを吸収できるため、人が目で読んで振り分けていた作業まで自動化の対象に入ります。ただし、Geminiの出す結果は毎回同じとは限らず、読み違いも起こります。送信や確定の前に人が確かめる工程を残すのが基本です。
GASでできないこと
GASはGoogleのサーバー上で動くため、手元のパソコンの中にあるものは扱えません。GASでできないことの代表は次のとおりです。
- ローカルのファイル(パソコンのデスクトップや社内のファイルサーバにあるファイル)を直接読み書きする
- パソコンにインストールしたソフトや、ブラウザの画面を操作する
- 社内のネットワークの中だけで動くシステムに、直接つなぐ
- 1回6分を超える長い処理を、途中で止めずに続ける
- 1日に数千件を超えるような大量のメールを送る
ローカルのファイルは、Googleドライブのパソコン版アプリで同期すればドライブ上のファイルとして扱えます。画面の操作が要る業務はRPA、Google以外のシステムを何種類もつなぐ業務は別の自動化ツールのほうが向いています。
GASは無料で使えるか・プログラミングの知識は要るか
GASそのものは無料で使えます。Googleアカウントがあれば追加の契約は要らず、Google Workspaceを契約している会社なら今の契約のまま使えます。費用がかかるのは、Gemini APIを有料枠で使う場合や、外部のサービスの利用料が発生する場合です。
プログラミングの知識は、ある程度は要ります。GASのコードはJavaScriptという言語で書きます。簡単な転記や通知なら、Geminiに「このシートのB列を読んで、空欄の行があれば担当者にGmailで知らせるGASを書いて」と頼めば動くコードが出てきます。ただし、止まったときや手順を変えたいときにコードを読んで直せる人が、社内か外部に1人はいないと続きません。
GASの業務効率化の例|Geminiと組み合わせた9件
GASの業務効率化の例を、処理の流れと、GASだけでできる部分・Geminiが要る部分に分けて9件並べます。部門は代表的な使われ方で、業務の性質が近ければほかの部門でも同じ形で使えます。
| 業務 | 主な部門 | 処理の流れ | GASだけでできる部分 | Geminiが要る部分 |
|---|---|---|---|---|
| 問い合わせの受付と振り分け | 全社の窓口 | フォームの送信をきっかけに、回答をスプレッドシートに記録し、担当者へ通知する | 記録とGmail・チャットへの通知 | 内容の分類と要約 |
| 注文メールの台帳への転記 | 営業・受注 | 特定のラベルの付いたGmailを定期に読み、注文の項目を台帳へ書き込む | メールの検索と台帳への書き込み | 書き方がばらばらな本文からの品名・数量・納期の抜き出し |
| 議事メモからのタスクの洗い出し | 全社 | Googleドキュメントの議事メモを読み、決まったことと宿題をタスク表とカレンダーに載せる | タスク表とカレンダーへの登録 | 要約と、宿題・担当者・期限の抜き出し |
| 日報・週報のまとめ | 管理職 | フォームで集めた日報を毎週集計し、部署ごとの要点をGmailで送る | 回答の集計と定期のメール送信 | 部署ごとの要点のまとめ |
| 支払・契約の期限の通知 | 経理・総務 | スプレッドシートの期日を毎朝確かめ、期限の近いものを担当者へ知らせる | 期日の判定と通知のすべて | 不要 |
| 定型の問い合わせへの返信下書き | 顧客対応 | 受信した問い合わせに合わせた返信の文面を作り、Gmailの下書きに保存する。送信は人が行う | 下書きの保存と対応状況の記録 | 問い合わせの内容に合わせた返信の文面 |
| 書類のファイル名の付け替え | 総務・法務 | ドライブのフォルダに入ったPDFの中身から取引先名と日付を読み、名前を付け替えて振り分ける | ファイルの移動と名前の変更 | PDFの中身からの取引先名・日付の読み取り |
| アンケートの自由記述の分類 | 人事・企画 | フォームの自由記述を「要望」「不満」「感謝」などに分け、件数をグラフにする | 集計とグラフの更新 | 自由記述の分類と代表的な意見の要約 |
| 定例レポートの作成 | 経営企画 | スプレッドシートの数字を毎週集計してスライドのひな形に差し込み、Gmailで送る | 集計・差し込み・送信 | 前の週と比べた変化のコメントの下書き |
GASだけで済む例とGeminiが要る例の見分け方
入ってくるデータの書式が決まっていればGASだけで済み、人が書いた文章を読む工程があればGeminiが要ります。期限の通知や定例の集計は、数字と日付を決まった規則で処理するだけなので、Geminiを使う理由がありません。Geminiを足すと費用と確認の手間が増えるため、要らない工程には入れないほうが運用は安定します。
Geminiが要る工程に、Googleのサービスの中のデータをどこまで送ってよいかは、社内のルールとGemini APIの契約で決まります。無料枠では送った内容がGoogleのサービスの改善に使われるため、顧客の情報や社外秘の資料を送るなら有料枠を使います。
例を自社の業務に当てはめるときの注意
表の例は、どれも人が確かめる工程を残す前提で書いています。返信の下書きはGmailの下書きに保存するところで止め、送るかどうかは担当者が決めます。注文の転記も、Geminiが読み取れなかった件や数量が普段と大きく違う件には印を付け、人が見てから確定します。
自社に当てはめるときは、今の手順のうちどこで人が判断しているかを先に書き出します。判断の工程をすべて自動にしようとすると、例外の扱いで止まり、結局は手作業に戻りがちです。
GASの上限|実行時間は1回6分、メール送信は1日100件から
GASには、1回の実行時間や1日に送れるメールの件数などの上限があり、Googleの一般アカウントとGoogle Workspaceのアカウントで値が違います。Googleの割り当てのページに載っている主な上限は次のとおりです。
| 項目 | 一般アカウント | Google Workspace |
|---|---|---|
| メールの送信先(1日) | 100件 | 1,500件 |
| トリガーで動いた処理の合計の実行時間(1日) | 90分 | 6時間 |
| 外部への通信(URL Fetch、1日) | 20,000回 | 100,000回 |
| スクリプトの実行時間(1回) | 6分 | 6分 |
| カスタム関数の実行時間(1回) | 30秒 | 30秒 |
スクリプトの実行時間の上限は、Google Workspaceでも1回6分で、一般アカウントと変わりません。 上限を超えると処理はその場で止まり、途中までの結果だけが残ります。
上限に当たりやすい業務
上限に当たりやすいのは、件数の多い一括処理と、Geminiを1件ずつ呼ぶ処理です。Gemini APIの呼び出しは外部への通信の回数に数えられ、Geminiの応答を待つ時間も実行時間に含まれます。数百件のメールを1回の実行でまとめて要約しようとすると、6分を超えやすくなります。
対策は、処理を小分けにすることです。1回に扱う件数を決めて、どこまで処理したかをスプレッドシートに記録し、トリガーで数回に分けて続きを動かします。社外への案内メールのように1日に数百件を送る業務は、一般アカウントでは上限の100件に届くため、Google Workspaceのアカウントで動かすか、メール配信の専用サービスを使います。
属人化を防ぐ|作った人が辞めても止まらない仕組み
GASの属人化を防ぐには、仕様を書き残し、スクリプトを個人ではなく会社の管理下に置き、保守を誰が持つかを決めておきます。GASは担当者が自分の判断で作れる手軽さがある反面、作った人しか中身を知らないまま業務に組み込まれやすく、退職や異動の後に止まってから気づくことが少なくありません。
仕様と引き継ぎの資料を書き残す
スクリプトごとに、何のために・何をきっかけに・どのデータを読んで・何を書き込むかを1枚にまとめます。あわせて、止まったときに最初に確かめる場所(実行の記録、読み込むシートの列の並び、送り先のアドレス)を書いておくと、作った人がいなくても原因を探せます。Geminiを使う工程があれば、Geminiに渡している指示文も残します。
引き継ぎの資料は、スクリプトと同じ場所に置きます。別の場所に置くと、スクリプトだけ直されて資料が古くなります。
共有ドライブとWorkspaceの管理者側の設定で管理する
スクリプトは個人のマイドライブではなく、共有ドライブの中のスプレッドシートやフォームに作ります。マイドライブに作ったスクリプトは作った人のアカウントに属し、アカウントを削除すると一緒に使えなくなります。トリガーも設定した人のアカウントで動くため、業務用のアカウントで設定し直すか、担当者が替わるときに付け替える手順を決めておきます。
Google Workspaceの管理者は、管理コンソールでApps Scriptから使えるGoogleのデータの範囲や、外部のアプリとの接続を制限できます。社内でGASを広げる前に、情報システムの担当者と、どこまで許すかを決めておくと、知らないところでスクリプトが増えるのを防げます。
作る人を社内で育てるか、外へ頼むか
自動化したい業務が今後も増えるなら社内で作る人を育て、1〜2件で終わるなら外へ頼むほうが早く済みます。社内で育てる場合も、最初の1件は外部の人と一緒に作り、仕様の書き方や保守の手順まで一通り経験してもらうと、2件目から自分で作れるようになります。外へ頼む場合は、納品物にスクリプトの説明と保守の範囲を含め、社内の誰が窓口になるかを決めてから依頼します。
最初の1業務の選び方|GASの業務効率化を小さく始める
最初の1業務は、Googleのサービスの中で完結し、同じ手順を週に何度も繰り返している作業から選びます。効果が見えやすく、うまくいかなかったときに手作業へ戻しやすいためです。候補を比べるときは、次の基準で見ます。
| 基準 | 向いている業務 | 後回しにする業務 |
|---|---|---|
| データの置き場所 | スプレッドシート・Gmail・フォーム・ドライブの中で完結する | ローカルのファイルや社内のシステムのデータが要る |
| 繰り返しの多さ | 毎日・毎週、同じ手順で何度も行う | 月に1回だけ、または毎回やり方が違う |
| 手順の決まり方 | 担当者が替わっても同じ手順で進む | 担当者の経験や勘で判断している |
| 間違えたときの影響 | 人が後で確かめて直せる | 社外への送信や支払のように取り消しにくい |
| Geminiに送る情報 | 社内向けの文章や、送ってよいと決めた情報 | 個人情報や契約の中身など、送ってよいかが決まっていない |
向いている業務の列に多く当てはまる作業から1つ選び、今その作業に1件あたり何分かかっているかを数えてから作り始めます。数えておかないと、自動化した後に効果を説明できません。
判断フローで候補を絞る
候補の業務を1つずつ当て、上の問いから順に答えると、GASだけで作るか、Geminiも組み込むかが決まります。最後の問いで止まった業務は、作る前に送ってよい情報の範囲と契約を決めます。
当社の事例:GeminiとGASで提案資料の作成をつないだ
当社が支援した広告代理店の事例を一例として紹介します。
- 課題営業の担当者が提案のたびに市場や競合を調べ、Googleスライドで資料を一から作っていました。社内の規定で、外部の生成AIツールは使えませんでした。
- どのように解決したかすでに契約していたGoogle Workspace with Geminiで調査と骨子づくりを行い、GASで社内のスライドの型に流し込むようにしました。骨子の確認と仕上げは担当者が行います。
- 結果担当者1人あたり月20時間の工数を削減しました。
提案資料のほかにも、定例の報告や問い合わせの受付のように、Googleのサービスの中で型が決まっている作業なら同じ考え方で広げられます。自社で試すなら、まずは毎週いちばん多く繰り返している作業1つについて、1件に何分かかっているかを数えるところから始めます。
まとめ:GASの業務効率化の例から、最初の1業務を選ぶ
- GASでできることは、スプレッドシート・Gmail・フォーム・カレンダー・ドライブの定型作業の自動化で、Geminiを組み込むと要約・分類・抜き出し・下書きまで任せられます
- ローカルのファイルや画面の操作は扱えず、スクリプトの実行時間はGoogle Workspaceでも1回6分が上限です
- GASの業務効率化の例を自社に当てはめるときは、人が確かめる工程を残し、Geminiは文章を読む工程だけに使います
- 属人化を防ぐため、仕様を書き残し、共有ドライブで管理し、保守を誰が持つかを決めておきます
- 最初の1業務は、Googleのサービスの中で完結し、同じ手順を何度も繰り返す作業から選びます
Augueでは、Google WorkspaceとGeminiを使った業務の自動化を、対象業務の選定から試作、社内で保守できる体制づくりまで支援しています。自社で試す業務を決めたものの社内に作れる人がいない場合など、ご興味がある方は是非ご相談ください。
AIツールを、業務の成果につなげませんか?
よくある質問
GASとAppSheetはどう使い分けますか?
AppSheetは、スプレッドシートなどのデータをもとに入力画面や一覧画面を持つ業務アプリを、コードを書かずに作る道具です。GASは画面を作るより、裏側で決まった処理を自動で回すことに向いています。現場の人がスマートフォンから入力・確認する画面が欲しいならAppSheet、メールの振り分けや定期の集計のように人が触らずに動いてほしい処理ならGASと考えると分けやすく、両方を組み合わせることもできます。
GASで1つの業務を自動化するのに、どれくらいの期間がかかりますか?
一律の期間は出せません。転記や通知のように手順が決まった処理なら、作る人が慣れていれば数日で試作できることもありますが、例外の扱いや確認の手順を決める時間のほうが長くかかりがちです。見積もるときは、今の手順を書き出したときの工程の数と、手順どおりに進まない件がどれくらいあるかを数えると、作る期間と人が残す作業の量を判断しやすくなります。
GASとn8nのような自動化ツールは、どちらを選べばよいですか?
処理がGoogle Workspaceの中で完結するならGASが手軽で、追加の契約も要りません。会計ソフトや顧客管理のシステムなどGoogle以外のサービスを何種類もつなぐ場合や、処理の流れを画面で見ながら直したい場合は、n8nのような自動化ツールのほうが管理しやすくなります。GASで始めて、つなぐ先が増えた段階で移すという順でも構いません。
GASの自動化を外部に頼む場合、何を用意すればよいですか?
今の手順を順番に書いたメモと、実際に使っているスプレッドシートやフォームの見本、手順どおりに進まない件の例を数件用意すると、話が早く進みます。あわせて、完成したスクリプトを誰のアカウントで動かし、誰が保守するかを依頼の前に決めておきます。納品物にスクリプトの説明書と、止まったときの確認先を含めてもらうと、社内で引き継ぎやすくなります。
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