AI導入の支援をどこに頼むかは、依頼の目的で決まります。どの業務にAIを当てるかを決めたいなら戦略系のコンサル、作るものが決まっていて作り手が欲しいなら開発会社、社員がAIを使えるようにしたいなら研修会社、社内で作り続けられるようにしたいなら伴走型が合います。目的が社内で言葉になっていないまま相談を始めると、各社が自社の得意な範囲で提案を出すため、見積を並べても比べられません。

この記事では、コンサルに限らず4つの依頼先の選び分けを扱います。AIコンサルティングそのものに頼める範囲と費用の決まり方は、「AIコンサルティングとは?支援範囲・費用の決まり方・会社の選び方」で扱っています。

AI導入支援の依頼先を目的から選ぶ早見表

まず、自社がいま何を手に入れたいのかを4つの目的のどれかに当てはめます。

依頼の目的 合う依頼先 依頼が終わったときに手元に残るもの
構想を固めたい(どの業務から手を付けるか決めたい) 戦略系コンサル 対象業務の優先順位、効果の試算、進め方の計画
作ってほしい(対象業務と作るものは決まっている) 開発会社 動く仕組み、設計書、運用手順
社員を育てたい(ツールは入れたが使われていない) 研修会社 研修の受講記録、教材、社内の利用ルール
社内で作れるようにしたい(外注に頼り続けたくない) 伴走型の支援会社 社内担当者が作った仕組みと、直せる担当者

「AIコンサル」という言葉は、このうち戦略系と伴走型の両方を指して使われることが多く、開発会社や研修会社も「コンサルティング」を名乗る場合があります。会社の名乗り方ではなく、提案書で人と期間を最も多く割いている作業がどれかで、4つのどこに当たるかを見分けます。

目的が2つにまたがる場合もあります。たとえば対象業務が決まっておらず、しかも将来は社内で作りたいという場合です。そのときは、先に片付けないと次へ進めない方、多くは構想から頼みます。

依頼の目的から4つの依頼先へ分かれる判断の流れ 対象業務が決まっていなければ戦略系コンサルへ。決まっていて仕組みを作らないなら研修会社へ。作る場合、作ったあと社内で直し続けるなら伴走型の支援会社、保守も外注するなら開発会社へ分かれる。 社内で判断すること 合う依頼先 対象業務は 決まっているか 仕組みを作る 必要があるか 作ったあと社内で 直し続けるか 戦略系コンサル 研修会社 開発会社 伴走型の支援会社 いいえ はい いいえ(使い方を広める) はい はい(社内で直す) いいえ(保守も外注)
対象業務、作るかどうか、作ったあと誰が直すかの3つを社内で決めると、依頼先は1つに絞れる。

4つの依頼先は何が違うか

戦略系コンサルは何を引き受けるか

業務の洗い出し、AIを当てる候補の選定、効果の試算、全社の進め方の計画づくりを引き受けます。経営層から方針を求められているが、どこから手を付ければ効果が出るのか見えていない段階に合います。

気を付けるのは、計画書ができた時点で契約が終わる形が多いことです。そのあと誰が作るかが決まっていないと、計画が棚に残ります。依頼するなら、計画の中身が次の発注にそのまま使える粒度か、つまり対象業務ごとの件数や関わるシステムまで書かれるかを、契約前に確かめます。

開発会社に直接頼めるのはどんなときか

対象業務と作るものが社内で決まっているときです。この条件がそろっていれば、コンサルを挟まずに開発会社へ依頼したほうが、費用も期間も抑えられます。反対に、作るものが曖昧なまま頼むと、要件の詰めを開発会社が見積の外で抱え込むか、追加費用として後から出てきます。

開発会社の選び方と見積の比べ方は「AIエージェント開発会社の選び方」で詳しく扱っています。

研修会社で足りるのはどんなときか

生成AIのツールはすでに入っていて、足りないのが社員の使い方だけというときです。新しい仕組みを作る必要がなければ、研修と社内の利用ルールで目的を果たせます。

一方で、研修だけでは業務の流れは変わりません。受講後に使われる場面が業務の中に用意されていないと、数か月で利用が落ちます。研修の形態の違いは「生成AI研修と講座の違い」にまとめています。

伴走型はほかの3つと何が違うか

伴走型は、仕組みを作る作業を社内の担当者が行い、外部はその横で設計の助言やレビューを担う形です。開発会社との違いは、手を動かす人が社内にいることです。完成までの期間は開発会社に任せるより長くなりやすい代わりに、支援が終わったあとも社内で直せます。

条件は、社内に担当者を置き、その人の業務時間の一部を支援期間中ずっと充てられることです。これが用意できないなら、伴走型を選んでも作業は外部へ戻っていきます。

外部に頼むメリットと、頼まなくてよい場合

外部に頼む利点は大きく3つあります。社内では見えにくい業務の無駄や重複を、第三者の目で洗い出せること。他社で試された進め方や失敗の例を、自社の計画に取り込めること。そして、依頼の過程で社内の担当者がAIの使いどころを学べることです。

ただし、3つ目は自動では起きません。担当者が会議に同席するだけで作業を外部が持っていると、何も残らないまま契約が終わります。社内に何を残すかは、後の節で扱う契約の決め方で左右されます。

頼まなくてよい場合もあります。対象業務が1つに決まっていて、既製のツールを設定すれば済むなら、コンサルも開発会社も要りません。既製ツールで済むかどうかの見極めは「AIエージェントは既製ツールか自作か」で扱っています。

候補を比べるときに確かめる観点

上位の比較記事でよく挙がる観点は、業界実績、コミュニケーション、セキュリティ、サポート範囲の4つです。それぞれ、提案の場で何を聞けば確かめられるかまで落とすと、候補を比べられるようになります。

観点 提案の場で聞くこと 答えが曖昧なときの扱い
実績 自社と性質の近い業務(定型か、判断を含むか、件数が多いか)で何をしたか 業種名だけの実績紹介なら、業務の中身を具体的に聞き直す
コミュニケーション 定例の頻度、窓口の担当者、現場へのヒアリングの回数 現場と話す機会が無い提案は、候補から外すか条件を足す
セキュリティ 社外に出すデータの範囲、使うAIサービス、学習への利用の有無 情報システム部門の審査項目に沿って書面で回答をもらう
サポート範囲 契約に含む作業と別料金の作業の境目、支援が終わる条件 対象外の作業を列挙してもらう

業界実績は、業種が同じかどうかより、業務の性質が近いかどうかで見ます。性質が近ければ、業種が違っても進め方を流用できます。セキュリティの審査で確認する項目は「生成AIのセキュリティ審査チェックリスト」にまとめています。

費用はどう決まり、どう抑えるか

費用は、構想・PoC(少量のデータで試して効果を確かめる検証)・開発のどこまで頼むか、何か月頼むか、どの役割の人が何人関わるかの掛け合わせで決まります。依頼先の型によって厚く人を当てる工程が違うため、型の違う会社の見積を金額だけで並べても比べられません。工程ごとの費用の決まり方と見積の比べ方は「AIコンサルティングとは」で詳しく扱っています。

費用を抑える方法としてよく挙がるのは、次の3つです。

  • 段階に区切って頼む構想やPoCで一度契約を区切り、続けるかを判断してから次を頼みます。合わなかったときに引き返せます
  • 既製のサービスで済む部分は作らない作るのは既製品で足りない部分だけにします
  • 補助金の対象になるかを確かめる国や自治体の補助金がIT導入や人材育成の費用を対象にしている場合があります。対象経費と公募の時期は年度ごとに変わるため、公募要領で確認してから見積の範囲を決めます

見落としやすいのは、社内から出す時間です。初期の見積額が低くても、社内の担当者が多くの時間を割く提案なら、人件費を足した合計は逆転することがあります。

依頼前に社内で決めておく5項目

依頼先の型が決まったら、見積を依頼する前に次の5つを社内で決めます。ここが決まっていないと、提案の範囲が各社でばらばらになり、比較にも契約にも使えません。

決める項目 決める内容 決まっていないと起きること
対象業務 どの業務の、どこからどこまでを対象にするか。月あたりの件数と担当人数 依頼先が範囲を広めに見積もり、金額が膨らむ
判断を持つ人 続けるか止めるか、成果物を受け入れるかを決める人 検討が止まったときに誰も決められず、契約だけが延びる
成果物 依頼が終わったときに受け取るものの一覧 「一式」で納品され、社内で直すための資料が残らない
引き継ぎの形 支援が終わったあと、誰が何を持つか 支援の終了と同時に、直せる人がいなくなる
社内の担当者 窓口と作業を持つ人、支援に充てる業務時間の割合 作業が外部に寄り、社内に何も残らない

対象業務はどこまで絞っておけばよいか

候補を2〜3個まで絞り、それぞれ月の件数、担当人数、関わるシステムの名前を書き出せれば十分です。構想から頼む場合でも、この程度の材料があれば提案が具体的になります。候補が挙げられない場合は、それ自体が戦略系コンサルへ頼む理由になります。業務の洗い出し方は「業務の棚卸しからAI化の対象を決める」で扱っています。

判断を持つ人は誰にするか

予算を持つ人と、対象業務の結果に責任を持つ人が同じなら、その人です。分かれている場合は、どちらが最終的に決めるかを先に決めます。依頼中に出てくる判断は、PoCの結果を見て本番へ進むか、途中で対象業務を差し替えるかといったもので、決める人がいないと会議が重なるだけで進みません。

成果物と引き継ぎの形は何を書けばよいか

成果物は、依頼先の型によって中身が変わります。戦略系なら選定の理由と試算の前提、開発会社なら設計書とAIへの指示文と設定値、研修会社なら教材と社内で改変してよい範囲です。引き継ぎの形は、支援終了後に社内で持つのか、保守契約として外部に残すのかをまず決めます。社内で持つなら、次の節の契約の決め方がそのまま必要になります。

社内の担当者はどれくらいの時間を充てるか

伴走型を選ぶなら、担当者の業務時間のうち何割を充てるかを、担当者の上長と約束しておきます。兼任でも構いませんが、週に何時間と決めておかないと通常業務に押されます。開発会社に任せる場合でも、要件の確認や受け入れの確認で時間は要ります。社内の推進体制の組み方は「社内のAI推進体制をどう作るか」を参照してください。

ノウハウを社内に残すための契約の決め方

外部に頼むときのリスクとしてよく挙がるのは、ノウハウが社内に残らないことと、情報が漏れることの2つです。どちらも契約の書き方で手当てできますが、契約を結んだあとで求めると範囲や費用の変更として扱われがちです。

ノウハウが残らない原因は、多くの場合、社内担当者の作業が契約のどこにも書かれていないことです。外部が作業を持つ前提で契約すると、担当者は同席するだけになります。そこで、契約か発注書に次のことを書きます。

  • 作業の分担表工程ごとに、外部が行う作業と社内担当者が行う作業を分けて書きます。たとえばPoCなら、正解データの作成と精度の判定は社内担当者、試作は外部、というように分けます
  • 社内担当者が自分で1回変更を加えることを、支援期間の終わりの条件に入れる資料を受け取っただけで一度も触っていない担当者は、支援が終わると手が止まります
  • 作ったものの権利と、社内で改変してよい範囲指示文や設定、教材を契約終了後に社内で直してよいかを明記します
  • 支援が終わる条件期間ではなく、社内担当者が何をできるようになったら終えるかで書きます

情報漏洩への手当ては、依頼先へ渡すデータの範囲、依頼先が使うAIサービス、入力したデータを学習に使わせない設定、契約終了後のデータの返却と削除の方法を契約に入れることです。開発を外注する場合の契約項目は「AIエージェント開発を外注するときの契約で決めること」で扱っています。

まとめ:目的で依頼先を1つに絞り、5項目を決めてから見積を頼む

  • 依頼先は目的で選ぶ。構想を固めたいなら戦略系コンサル、作ってほしいなら開発会社、社員を育てたいなら研修会社、社内で作れるようにしたいなら伴走型
  • 名乗り方ではなく、提案書で人と期間を最も割いている作業で依頼先の型を見分ける
  • 候補は実績・コミュニケーション・セキュリティ・サポート範囲を、提案の場で聞ける質問に落として比べる
  • 費用は頼む工程・期間・体制で決まる。段階で区切り、既製品で済む部分は作らず、社内から出す時間も合計に入れる
  • 見積の前に、対象業務、判断を持つ人、成果物、引き継ぎの形、社内の担当者の5つを社内で決める
  • ノウハウを残すには、社内担当者の作業と、支援が終わる条件を契約に書く

Augueでは、AIエージェントの構想から開発までを、社内の担当者が作業を分担する伴走型の形で支援しています。自社がどこに何を頼むべきか、依頼前に何を決めておくかを整理したい方は、是非ご相談ください。

まずは現状をお聞かせください

弊社では具体的な要件が固まっていない段階でも、無料相談で現状をお聞きしていますので、お困りの際はご相談ください。

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よくある質問

1社に構想から開発・育成までまとめて頼むのと、段階ごとに依頼先を分けるのとではどちらがよいですか?

まとめて頼むと段階の間の引き継ぎが要らず、窓口も1つで済みます。一方で、得意でない段階まで同じ会社が持つため、その段階の質が落ちることがあります。分ける場合は、前の段階の成果物を次の依頼先がそのまま使える形で受け取れるかが条件になります。対象業務がまだ決まっていないうちは、構想だけを区切って頼み、その成果物を見てから次の依頼先を決める形が引き返しやすくなります。

社内にIT部門がなくても依頼できますか?

依頼はできますが、社内の窓口と判断する人がいないと進みません。IT部門がなくても、対象業務をよく知る現場の責任者が窓口を持てば、構想や研修の依頼は進められます。開発を頼む場合は、既存システムの管理を誰がしているか(外部の保守会社を含む)を先に確かめておきます。接続の可否や権限の相談先が分からないまま発注すると、開発の途中で止まります。

依頼先の候補は何社くらいに絞って比べればよいですか?

一律の正解はありませんが、同じ型の会社を2〜3社並べると、提案の違いが金額以外の点でも見えやすくなります。型の違う会社を混ぜて比べると、支援範囲がそろわず金額の比較が成り立ちません。先に目的から型を1つに決め、その型の中で候補を選ぶと、見積の読み比べにかかる時間を抑えられます。