内製化支援を探す前に決めること

AIの内製化を外部に手伝ってもらうと決めたあと、支援会社の一覧から入ると判断が付きません。各社の案内はどれも「戦略立案から実装、定着まで一気通貫で支援」と書かれており、文面の差がほとんどないためです。

先に決めるのは次の2点です。

  • 支援期間中に手を動かすのは誰か … 社内の担当者か、支援側か。ここを決めないと、契約後に「作ってもらう」形へ流れます
  • 支援の終わり方 … 何ができるようになったら終わりなのか。期間で切るのか、対象業務が自走したら切るのか

この2点が決まると、必要な支援の形が絞られます。社内で作れる状態を目標にするなら、手を動かすのは社内側で、支援側は詰まった箇所の切り分けを担う配分になります。伴走型と開発代行の違いはAI内製化支援サービスの選び方にまとめています。研修そのものを比べる段階であれば、法人向け生成AI研修おすすめ比較10選の方が近い内容です。どこから始めるかが未定の場合は生成AI内製化の最初の1業務の選び方を先に読んでください。

この記事で比べている4つの観点

10社の一覧に入る前に、何を見比べるのかを先に決めます。各社が掲げるサービス名で並べても差は出ないので、次の4点で見ます。

観点 見るところ この観点で決まること
支援のタイプ 入口が学習か実務か、手を動かすのが支援側か社内側か 自社の状況に合う型を1つに絞る
支援の終わり方 期間で切るのか、対象業務が自走した時点で切るのか 契約書へ書く終了の条件
社内側に必要なもの 担当者が出せる時間、社内システムの権限、情報システム部門の関与 依頼前に社内で確保しておくもの
実績の出典 社数や受講者数が公開情報として示されているか 提案の裏づけを確かめる質問

この4点を先に押さえると、後半の一覧表を上から順に読む必要がなくなります。自社に合うタイプの列だけを見て、そのタイプの会社の説明へ進む読み方ができます。

AI内製化支援の4タイプ

各社の支援内容を並べると、次の4つに整理できます。1社が複数を持つ場合は、案内の中心にあるものを主軸として見ます。

AI内製化支援の4タイプ 横軸は支援の入口が学習か実務か、縦軸は手を動かすのが支援側か社内側かを表し、育成先行型、基盤・ガバナンス型、業務伴走型、開発同行型の4つを配置した図 入口は学習 ← → 入口は実務 支援側が作る ← → 社内が作る 基盤・ガバナンス型 環境と規程を整え、安全に使える状態に 作るのは支援側 開発同行型 開発を受けながら引き継ぐ 途中から社内へ移す 育成先行型 学んでから自部門の業務へ当てる 対象を広げやすい 業務伴走型 実業務を題材に、社内の担当が作る 1業務ずつ確実に変わる
入口が学習か実務か、手を動かすのが支援側か社内側かで4タイプに分かれる。

タイプごとに、支援の終わり方と社内側に必要なものが変わります。

タイプ 支援の終わり方 社内側に必要なもの 向かない場面
育成先行型 受講と課題の完了、または技能の到達度で区切る 受講者の業務時間と、受講後に題材にする業務 特定の業務を今期中に変えたいとき
業務伴走型 対象業務が社内の担当だけで回った時点で区切る 対象業務の担当者が支援の場に出る時間 社内に担当を置く時間が取れないとき
開発同行型 引き継ぎの成果物がそろい、社内で修正できた時点 引き継ぎを受ける担当と、社内システムの権限 引き継ぎ先の担当が決まっていないとき
基盤・ガバナンス型 環境と規程が整い、社内の運用に乗った時点 情報システム部門の関与と、規程の承認プロセス 業務そのものを変えたいとき

4タイプは順に重ねられます。基盤を整えてから育成し、業務伴走で1件目を通し、対象が増えたら開発同行に切り替える形が、実務では収まりのよい順序です。

AI内製化支援会社おすすめ比較10選

タイプとサービス内容は、各社が公開している情報をもとに整理しました。実績は、公開されていない場合を要お問い合わせとしています。

会社名 タイプ サービス内容 実績
株式会社Augue 業務伴走型 Augue AX パートナー(研修とハンズオン実行支援、社内ガバナンス構築)/AX コンサルティング/AX ソリューション 営業からバックオフィス、開発まで幅広い領域で導入
株式会社AVILEN 育成先行型 職層別の生成AI研修、業務プロセス適用研修、実装研修、技術実装コンサルティング 提供1,000社以上
株式会社ELYZA 業務伴走型 ELYZA Works(現場主導でのAIアプリ作成)/AIシステムの実装と特化モデル開発への伴走 要お問い合わせ
株式会社エクサウィザーズ 育成先行型 エクサベース DXアセスメント&ラーニング/業務別のAIエージェント製品 全社員規模のeラーニング導入事例を掲載
株式会社キカガク 育成先行型 DX・AI人材育成/AX推進支援/キカガク DX-Navi 導入1,000社以上、受講生200,000名以上
クラスメソッド株式会社 基盤・ガバナンス型 生成AI総合支援サービス/AI-Starter(全社員が使える環境を2週間で構築)/AI駆動開発支援/AI適用診断 要お問い合わせ
株式会社ギブリー 業務伴走型 MANA(AI戦略と体制構築、人材育成、業務プロセス変革)/Givery AI Lab/Givery AI 顧問 要お問い合わせ
株式会社SMSデータテック 業務伴走型 Claude Cowork 内製化支援(活用方針の策定、セキュリティ対策、運用ルール整備) 要お問い合わせ
株式会社STANDARD 育成先行型 TalentQuest(個別に講座を割り当てる育成)/伴走型DXコンサルティング 1,000社以上のDX推進を支援
株式会社ヘッドウォータース 開発同行型 HWS Agent Camp/AI駆動開発/Agentic DevOps Microsoft Advanced Specialization取得

この表は当社を先頭に置き、以降は社名の五十音順で並べています。順位や優劣を示すものではありません。数値はいずれも各社の公開情報を出典としており、自社での検証値ではありません。以下の各社の説明も、各社が公開している記述の範囲にとどめています。

業務伴走型の4社

実業務を題材に、社内の担当者が手を動かす形です。1業務ずつ進むため対象は絞られますが、業務そのものが変わります。

株式会社Augue

会社名 株式会社Augue
主なサービス Augue AX パートナー/AX コンサルティング/AX ソリューション

社員がAIを使えるようになるところで止めず、自身や組織の業務を自動化できる状態までを目標に置いた月額制の伴走支援です。研修とハンズオンの実行支援、社内ガバナンスの整備を一体で提供し、安全に作って社内で運用できる体制まで含める構成を掲げています。

業務の棚卸しとTOBE業務プロセスの設計を行うAX コンサルティング、開発を引き受けるAX ソリューションと組み合わせられるため、対象業務が増えた段階で配分を変えられます。

株式会社ELYZA

会社名 株式会社ELYZA
主なサービス ELYZA Works/AIリサーチ&ソリューション事業

ELYZA Worksは、作りたいアプリの概要を入力すると自社専用のAIアプリを現場主導で作成でき、チームで共有して改善できる形を掲げています。加えて、AIシステムの実装や企業・業界に特化した大規模言語モデルの研究開発に伴走すると記載されています。

現場の担当者が自分で作る前提のため、情報システム部門を通さずに部門単位で始めたい場合に合います。

株式会社ギブリー

会社名 株式会社ギブリー
主なサービス MANA/Givery AI Lab/Givery AI 顧問/Track

AI戦略と体制の構築、人材育成と社内浸透、PoCとラボ型開発、業務プロセス変革支援、AI Agentの構築が支援範囲として挙げられています。共創型のプロジェクト支援としてGivery AI Lab、技術アドバイザリーとしてGivery AI 顧問があり、体制づくりの段階から相談できます。

育成と技能の評価をつなげたい場合、人的資本インテリジェンス事業のTrackを併せて使える点が特徴です。

株式会社SMSデータテック

会社名 株式会社SMSデータテック
主なサービス Claude Cowork 内製化支援

導入から組織への定着までを通して支援する形で、無料診断、活用方針の策定、セキュリティ対策、運用ルールの整備が支援内容として挙げられています。現場で使われ続ける内製化体制の構築を掲げている点が、導入だけで終わらせない設計です。

特定のツールを前提に進めたい場合、運用ルールまで含めて相談できる構成になっています。

育成先行型の4社

学習を入口にして、その後に自部門の業務へ当てる形です。対象人数を広げやすい代わりに、業務が変わるまでに距離があります。

株式会社AVILEN

会社名 株式会社AVILEN
主なサービス 職層別の生成AI研修/業務プロセス適用研修/実装研修/構築研修/技術実装コンサルティング

内製化を進める側にとっての利点は、学習から実装までが段階に分かれている点です。リテラシーの習得、業務プロセスへの適用、実装、構築と順に上がる構成のため、対象者ごとに到達点を決められます。技術実装コンサルティングもあるので、社内の担当が詰まった箇所だけを相談する形も取れます。提供実績は1,000社以上です(出典は同社の公開情報)。

株式会社エクサウィザーズ

会社名 株式会社エクサウィザーズ
主なサービス エクサベース DXアセスメント&ラーニング/業務別のAIエージェント製品

技能の把握を起点にする構成で、誰にどの育成が必要かを整理してから着手できます。全社員規模でのeラーニングの導入事例が掲載されています。

業務別のエージェント製品も持つため、製品を使いながら社内の技能を上げる進め方と、育成を先に回してから対象業務へ当てる進め方の両方が取れます。

株式会社キカガク

会社名 株式会社キカガク
主なサービス DX・AI人材育成/AX推進支援/キカガク DX-Navi

育成の到達点を実務側に置いている点が、内製化と噛み合う構成です。計画の策定から研修設計、実務での成果づくりまでを通して支援する形を掲げています。導入企業1,000社以上、受講生200,000名以上を掲げています(出典は同社の公開情報)。

機械学習まで含めたコースがあるため、社内で作れる範囲を広げていきたい場合の選択肢になります。

株式会社STANDARD

会社名 株式会社STANDARD
主なサービス TalentQuest/伴走型DXコンサルティング

育成基盤で個々の学習を割り当てながら、伴走支援のコンサルティングで実務側を進める形です。人材育成を軸に内製化までを一気通貫で支援する方針を掲げ、東証プライム上場企業を中心に1,000社以上のDX推進を支援したと記載されています。

育成の進み方を数値で管理して経営へ報告する必要がある場合、この型が扱いやすくなります。

開発同行型と基盤・ガバナンス型の2社

株式会社ヘッドウォータース

会社名 株式会社ヘッドウォータース
主なサービス HWS Agent Camp/AI駆動開発/Agentic DevOps

HWS Agent Campは短期間でAIエージェントの設計から開発、評価までを体験するワークショップ型のプログラムです。同社は、技術を現場でのビジネス価値に転換することにコミットし、顧客による内製化を実現する体制として説明しています。Microsoft Advanced Specializationの取得とMicrosoft Partner of the Yearの受賞が明記されています。

Microsoft Azureを基盤に選ぶ場合、開発を進めながら社内へ引き継ぐ形が取りやすい相手です。

クラスメソッド株式会社

会社名 クラスメソッド株式会社
主なサービス 生成AI総合支援サービス/AI-Starter/AI駆動開発支援(AIDD)/AI適用診断サービス

戦略立案から実装までを一貫して支援する形で、コンサルティング、環境構築、研修、運用対応が含まれます。AI-Starterは全社員が安全に使える生成AI環境を2週間で構築するもので、ガバナンスと活用の両立を前面に出しています。着手箇所が未定の段階向けにAI適用診断サービスも用意されています。

まず安全に使える環境を整えたい場合、この型から入って業務伴走型へ移る順序が組めます。

支援の終わり方を契約前に決める

内製化支援でつまずくのは、支援期間が終わったのに社内で直せない状態です。これを避けるには、終わりの条件を契約前に文章にします。

決めること 具体的な書き方の例 決めないと起きること
出口の条件 対象業務を社内の担当だけで2回通せた時点で終了とする 期間満了で終わり、自走できるかは不明のまま残る
引き継ぐ成果物 設計書、プロンプト、評価に使った入出力の記録を社内で読める形式で受け取る 動くものだけが残り、修正のたびに調査からやり直す
社内側の担当と時間 対象業務の担当者が週2時間、支援の場に出る 支援側だけで作業が進み、社内に何も残らない
支援後の相談範囲 終了後3か月は質問へ回答する範囲を含める 想定と違う結果が出た時点で元の手順へ戻る
対象を広げる条件 1件目が自走したら、次の対象業務を同じ条件で追加する 展開のたびに初回と同じ費用と交渉が必要になる

このうち出口の条件は、契約後には変えにくい項目です。期間ではなく状態で書けるかを、提案の段階で確認します。

社内側で用意するもの

支援会社を決める前に、社内側の準備が整っているかを見ます。ここが欠けていると、どのタイプを選んでも進みません。

  • 対象業務の担当者が場に出られる時間 … 週に数時間でよいので、実際にその業務を回している人が参加する
  • 扱ってよいデータの線引き … 判断がつかないときの相談先まで決めておく
  • 社内システムの権限を持つ担当 … 接続先の認証とデータの取り扱いを判断できる人
  • 対象業務の現状の記録 … 1件あたりの処理時間と月間件数、現在の手順
  • 社内で運用する環境 … アカウントと、作ったものを置く場所

このうち現状の記録は、支援の開始前に着手できます。記録がないと、支援後に効果を議論する場面で感想しか材料が残りません。効果の測り方はAI導入の効果測定と効果検証にまとめています。

契約前に確認する質問

聞く質問 答えで見分けたいこと 答えが具体的でないときに起きること
支援期間中、手を動かすのは社内側と支援側でどう分担しますか 内製化を前提にした配分になっているか 作ってもらう形へ流れ、支援後に直せない
何ができるようになったら支援終了ですか 出口が状態で定義されているか 期間満了で終わり、自走できるか分からない
引き継ぎの成果物には何が含まれますか 社内で修正できる材料が残るか 動くものだけを受け取る
社内には誰を、どれくらいの時間で置く想定ですか 依頼側に必要な工数 担当が確保できず、途中で止まる
対象業務を追加する場合、費用はどう変わりますか 2件目以降の負担 展開の段階で予算が通らない
支援終了後の相談は、どの範囲まで含まれますか 終了直後に詰まったときの支援 想定と違う結果が出て元の手順へ戻る

まとめ:内製化支援を比べる要点

  • 会社の一覧を見る前に、手を動かすのは誰か、支援の終わり方をどう定義するかを決める
  • 各社は育成先行型、業務伴走型、開発同行型、基盤・ガバナンス型のどれを主軸にしているかで見る
  • 4タイプは重ねられる。基盤を整え、育成し、1業務を伴走で通し、対象が増えたら開発同行へ移す順序が収まりやすい
  • 出口の条件は期間ではなく状態で書く。対象業務を社内だけで通せた時点を終了とする形が明確
  • 引き継ぐ成果物に、設計書とプロンプト、評価に使った記録を含める取り決めを契約前に入れる
  • 社内側の準備は、担当者の時間、データの線引き、権限を持つ担当、現状の記録、運用環境の5つ

Augueでは、研修とハンズオンの実行支援、社内ガバナンスの整備を一体で行い、対象業務を社内の担当者が自分で組み替えられる状態までを支援しています。どのタイプから始めるべきかの整理からご相談を承っていますので、ご興味がある方は是非ご相談ください。

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よくある質問

内製化支援の契約期間は、どれくらいが目安ですか?

期間よりも、対象業務が何回発生するかで区切ります。日次で起きる業務を題材にすれば数週間で自走できるか判断でき、月次の業務なら3か月から半年かかります。期間だけを先に決めると、業務が数回しか通っていない状態で契約が切れ、判断の材料が足りないまま終わります。

社内に専任の担当を置けない場合、内製化は無理ですか?

専任である必要はありませんが、対象業務の担当者が支援の場に出られる時間は必要です。週に数時間でも、その業務を実際に回している人が参加すれば進みます。逆に、担当者が同席せず情報システム部門だけで進めると、動くものはできても業務の例外が抜けたものになります。

支援が終わった後、社内で直せなくなる原因は何ですか?

多いのは、設計の意図とプロンプトが手元に残っていないことです。動くものだけを受け取ると、なぜその判定にしたのかが分からず、修正のたびに調査からやり直します。契約時に、設計書とプロンプト、評価に使った入出力の記録を成果物へ含め、社内で読める形式で受け取る取り決めを入れます。

研修だけを頼んで、開発は自社でやる進め方は成立しますか?

対象業務が決まっていて、社内に手を動かせる人がいるなら成立します。ただし研修で扱う題材を自社の業務に差し替えられるかを事前に確認します。例題だけで終わる研修だと、受講後に自社へ当てはめる作業が各自に残り、そこで止まります。題材の差し替えと、実施後の質問窓口の有無が分かれ目になります。