内製化を決めた後に止まる場所
内製化の方針が決まり、担当する人も決まったのに、最初の一業務が決まらないまま数週間が過ぎることがあります。候補は挙がっているのに、どれも一長一短に見えて順位が付かない。内製化とは何をどこまで自社で持つことなのか、外注にどこを残すのかは 生成AI・AIエージェントの内製化とは で扱っています。この記事はその説明を繰り返さず、線引きが済んだ後に残る対象業務の選定だけを扱います。
止まる理由は、判断材料が言葉のままになっていることです。「手間がかかっている」「ミスが多い」「担当者が限られている」といった説明は、どの候補にも同じように付きます。同じ言葉で語れてしまう以上、比べられません。比べるには、候補を同じ物差しの上に並べる必要があります。
この記事では、候補の並べ方、最初の1本に向く条件、最初は外したほうがよい業務、候補を上から順に落としていく判定表、決め切れないときの締め方、選んだ業務の切り方、2本目以降の広げ方を順に書きます。作れる人をどう育てるかは 非エンジニアがAIを作れるようになるまで に譲り、ここでは何を対象にするかだけを扱います。
候補を年間の手作業時間で並べる
最初にやるのは、候補を1つの数字に落として並べることです。使う値は3つあります。
- 月あたりの発生件数
- 1件あたりの所要時間
- 関わる人数
このうち順位を決めるのは、件数と所要時間を掛けた値です。月200件で1件5分の業務は、月あたり1,000分になります。年間で200時間です。一方、月5件で1件2時間かかる業務は月600分、年間120時間です。後者のほうが1件は重く、担当者の負担感も強く語られますが、先に効くのは前者です。件数が多い業務は、同じ形の入力が繰り返し来るため手順を書き出しやすく、動かした後の効果も早く積み上がります。
関わる人数は、順位ではなく難易度の目安として添えます。1人で完結している業務は決めごとが少なく進みますが、3部門をまたぐ業務は、途中で1つの部門が合意していないだけで止まります。同じ手作業時間の候補が並んだときは、関わる人数が少ないほうから着手します。
候補一覧には次の列を持たせます。表計算ソフト1枚で足ります。
| 列 | 何を書くか | 選定でどう使うか |
|---|---|---|
| 業務名 | 担当者が普段呼んでいる名前 | 後で現場と話すときに通じる粒度にする |
| 月あたりの件数 | 直近の実績から数えた値 | 所要時間と掛けて順位を決める |
| 1件あたりの所要時間 | 最短と最長の幅で押さえる | 幅が大きい業務は例外が多いと見る |
| 年間の手作業時間 | 件数 × 所要時間 × 12 | 候補を並べ替える主キーにする |
| 関わる人数と部門数 | 実際に手を動かす人の数 | 同点の候補を分ける。多いほど合意に時間がかかる |
| 入力の形 | 決まった書式か、自由文か、紙か | 最初の1本に向くかの判定に使う |
| 間違いに気づく場所 | 後工程の突合、点検、承認など | 無い業務は最初の候補から外す |
この一覧を作る過程で、候補そのものが入れ替わることがあります。目立つ業務として最初に挙がったものが、数えてみると月に数件しか発生していない。逆に誰も候補に挙げなかった転記作業が、件数を数えると上位に来る。順位を数字で出す価値は、この入れ替えが起きる点にあります。
一覧を作るときは、候補の粒度をそろえておきます。「経理業務」のような大きなくくりと、「受け取った書類から日付を転記する」のような細かい単位が混ざると、件数も所要時間も比べられません。目安は、担当者が1件と数えられる単位です。1件の始まりと終わりを担当者が言えるなら、その粒度で数えられます。言えない場合は、まだ複数の業務が1つの名前でまとめられています。
なお、この一覧は削減額の試算にもそのまま使えます。測る指標と換算の手順は AI導入の効果測定と投資判断 で扱っています。
最初の1本に向く4つの条件
上位に並んだ候補を、次の4条件で絞ります。4つすべてを満たすものが最初の1本です。上位から順に条件を当てて、最初に全部満たしたものを選びます。
| 条件 | 満たしているかの確かめ方 | 満たしていないと起きること |
|---|---|---|
| 手順が言葉で説明できる | 担当者に手順を口頭で説明してもらい、その場で書き取れるか | 指示を書けないため、出力が安定しない。原因の切り分けもできない |
| 入力の書式がある程度そろっている | 直近10件を並べて、項目の位置と呼び名がどれだけ共通か | 例外対応の作り込みが先に膨らみ、本体が進まない |
| 間違いに人が気づける | 後工程に突合や点検があるか、無いなら誰が見るか | 誤りがそのまま先へ流れる。気づいた時には手戻りが大きい |
| 前後で成果を数えられる | 着手前の件数と所要時間が記録として残っているか | 続けるかどうかを判断できず、次の1本の承認も取れない |
手順が言葉で説明できるというのは、担当者が判断の根拠まで話せるという意味です。「見れば分かる」で止まる業務は、その場では順調に見えても、指示を書く段階で必ず詰まります。説明してもらいながらメモを取り、後で読み返して同じ作業ができそうかを確かめると判定できます。
入力の書式がそろっているは、完全に統一されている必要はありません。取引先ごとに書式が違っても、拾う項目が同じで、位置が数パターンに収まっていれば扱えます。直近10件を並べて、共通する項目が半分以上あるかを目安にします。
間違いに人が気づけるが、4つの中で最も飛ばされやすい条件です。出力が正しいかどうかを誰も確認しない業務を最初に選ぶと、誤りが見つかるのは何か月も後になります。後工程に突合や点検が既にある業務を選ぶと、この確認を新しく作らずに済みます。
前後で成果を数えられるは、続けるかどうかの判断に必要です。着手前の件数と所要時間が残っていない業務を選ぶと、動いた後で「速くなった気がする」以上のことを言えません。次の1本の承認を取るときに、この記録が材料になります。
この4条件は、検証から本番へ進めるときの条件とも重なります。検証だけで止まる原因と本番化の判断基準は 生成AIのPoCが本番で止まる理由 にまとめてあります。
最初は外したほうがよい業務
条件を満たしていても、最初の1本には向かない業務があります。次の4つは、2本目以降に回します。
| 最初は外す業務 | 何が起きるか | いつなら扱えるか |
|---|---|---|
| 社外への最終回答を伴う | 誤りがそのまま相手へ届く。信用の回復に時間がかかる | 社内向けの下書きまでで一度動かし、精度の傾向が分かってから |
| 根拠を法令で問われる | 説明責任が発生し、記録の要件から設計し直しになる | 保存や記録の要件を先に整理し、担当部門の合意を得てから |
| 月に数件しか起きない | 担当者が手順を覚える前に間隔が空く。効果も積み上がらない | 件数の多い業務で一通り経験してから |
| 現場の合意が取れていない | 動いても使われない。従来のやり方が並行して残る | 対象部門の担当者が選定に加わってから |
社外への最終回答を伴う業務は、誤りの影響が社内で止まりません。同じ業務でも、社内向けの下書きを作るところまでを対象にすれば、最初の1本として成立します。外へ出す最後の一手だけを人が持つ形にすると、範囲を狭めながら件数は確保できます。
根拠を法令で問われる業務は、判定そのものよりも、判定に至った記録をどう残すかの設計が重くなります。この整理をしないまま動かすと、後から記録の要件が出てきて作り直しになります。着手を止める必要はありませんが、最初の1本としては重すぎます。
月に数件しか起きない業務は、金額が大きく見えても後回しにします。担当者が次に触るのが1か月後では、前回どこで詰まったかを毎回思い出すところから始まります。手を動かす回数が確保できないと、内製化の目的である「自分で直せる状態」に届きません。
現場の合意が取れていない業務は、技術的には最も簡単に見えることがあります。それでも、対象部門の担当者が選定に加わっていない状態で作ると、完成した後で使われない仕組みが残ります。合意は選定の前提であって、動かしてから取るものではありません。
候補を絞り込む判定表
ここまでの条件は、年間の手作業時間で並べた上位の候補へ、上から順に当てていきます。当てる順番は、確かめるのに人手がかからないものからです。データの取り扱いは担当部門へ一度聞けば分かりますが、手順を言葉で説明できるかどうかは、担当者の時間を取って聞き取らないと判定できません。重い確認を先にやると、後の関門で落ちたときにその時間が無駄になります。
もう一つ決めておくのは、落ちた候補をどう扱うかです。落ちた候補には、順位が下なだけで一覧に残るもの、切り方を変えれば残るもの、候補業務の側をいくら見ても変わらないものが混ざっています。この区別を付けずに落とすと、同じ候補を数か月後にもう一度並べ直すことになります。
| 見る順番 | 落とす条件 | 落ちた候補の扱い |
|---|---|---|
| 1. 扱ってよいデータか | 社外へ出せないデータを含み、その線引きが決まっていない | 前提側。誰がいつ決めるかを記録して一覧から一旦外し、決まった時点で戻す |
| 2. 年間の手作業時間 | 上位の候補と桁が1つ違う | 次点。順位は件数で動くため一覧には残し、数え直す時期だけ決めておく |
| 3. 手順を言葉で説明できるか | 担当者の説明が「見れば分かる」で止まる | 切り直し。判断の入る工程を外し、その手前の情報収集や整形だけで数え直す |
| 4. 間違いに人が気づけるか | 後工程に突合も点検も無い | 切り直し。確認を担う人を決められるなら残す。決められないなら次点へ回す |
| 5. 現場が選定に加わっているか | 対象部門の担当者が候補出しに参加していない | 前提側。担当者を入れて候補から出し直す。技術的な易しさでは代替できない |
前提側に落ちた候補は、何度並べ直しても同じ場所で落ちます。扱ってよいデータの線引きも、現場が選定に加わっているかどうかも、決まるのは候補業務の外側です。ここを業務の問題として扱い続けると、選定そのものが止まったまま時間が過ぎます。誰がいつ決めるかを書いて一覧から外し、決まってから戻すほうが、選定は先へ進みます。
次点に回した候補は、一覧から消しません。件数は季節で動くため、繁忙期を挟むと順位が入れ替わることがあります。次に数え直す時期だけ決めておけば、1本目の判定が済んだ後にそのまま2本目の候補として使えます。
切り直しに分類した候補は、業務全体では落ちても、工程単位では残ることがあります。判断が入る工程を外して数え直すと年間の手作業時間は減りますが、条件のほうは満たすようになります。この切り方は次の節でそのまま使います。
選定に締め切りを置き、判定の条件を先に決める
判定表を当てても、候補が2つ3つ残って決まらないことがあります。ここで比べ続けると、選定そのものに数週間かかります。残った候補の差は着手してみないと分からない部分に寄っているため、材料を増やしても順位は動きません。候補一覧を作り始めた時点で、いつまでに1つへ絞るかを決めておきます。
同点になったときの決め方も先に置いておきます。関わる部門が少ない候補、担当者が選定に加わっている候補、着手前の件数と所要時間が記録として残っている候補の順に取ります。いずれも効果の大きさではなく、動かし始めてからの進み方に効く条件です。
対象が決まったら、着手する前に、続けるかどうかをどう判定するかを決めます。動かした後に決めようとすると、判定の基準が結果を見てから動きます。
| 先に決めること | 決め方の目安 | 決めずに始めると起きること |
|---|---|---|
| いつ判定するか | 日数ではなく、対象業務が何件通ったかで区切る | 件数の少ない月に当たり、材料が足りないまま判断を迫られる |
| 何を見て判定するか | 差し戻しの件数と、1件あたりの所要時間 | 速くなった気がするという以上のことを言えず、2本目の承認が取れない |
| 誰が判定するか | 対象業務の担当者と、続ける決裁をする立場の人の両方 | 現場だけの判断で終わり、続ける承認を後から取り直すことになる |
| 続けないときどう戻すか | 従来の手順へ戻す段取りと、戻す判断をする人 | 使われないまま残り、担当者が両方の手順を抱える |
いつ判定するかを日数で切らないのは、業務ごとに件数が違うためです。月200件の業務なら30件は1週間で溜まりますが、月10件の業務では3か月かかります。同じ「1か月後に判定」でも、見られる材料の量が桁で変わります。件数で区切っておけば、業務が変わっても同じ厚さの材料で判断できます。
何を見て判定するかは、着手前に数えた値と対になる形にします。前の節までで候補一覧に入れた件数と所要時間がそのまま基準になり、そこへ差し戻しの件数を足します。差し戻しは、精度の代わりに使える数え方です。何割が一度で通ったかは、担当者が普段の作業の中で数えられます。
続けないときどう戻すかを決めておくのは、止める判断を出しやすくするためです。戻す段取りが無いと、動かしたものを止める判断が、業務そのものを止める判断に見えてしまいます。従来の手順を誰がいつまで維持するかを先に書いておくと、1本目の判定は続けるか戻すかの二択で済みます。
選んだ業務を工程に切る
対象が決まったら、業務をそのまま丸ごと自動化しようとせず、工程に切ります。多くの業務は、読み取り・下書き・確認・反映の4つに分かれます。この単位で、どこを機械に任せてどこに人の確認を残すかを決めます。
工程に切る利点は2つあります。1つは、着手の範囲を狭められることです。4工程すべてを一度に作ると、どこが原因で止まったのか分かりません。読み取りだけを先に作り、出力を人が受け取る形で数週間動かすと、その業務でどこがずれやすいかが見えます。
もう1つは、人の確認を残す場所をあらかじめ決められることです。確認を後から足そうとすると、作ったものの途中に割り込ませる形になり、担当者の手間が増えます。最初から確認を工程として置いておけば、そこに時間を使う前提で設計できます。
4工程に切ると、どこから着手するかも決めやすくなります。多くの場合、先に手を付けるのは読み取りです。入力の形が決まっている業務ほど効果がはっきり出るうえ、正しく取れたかどうかを人がその場で判定できます。逆に、反映から先に作ると、上流の出力が安定しないまま連携先を触ることになり、間違ったデータが後続の帳票へ流れる経路を先に作ってしまいます。
差し戻しの記録は、この後の改善に直接使えます。同じ理由で戻ることが続くなら、指示の書き方か、読み取る項目の定義に原因があります。件数で並べると、どこから直せばよいかが順位で出ます。
候補になりやすい業務の形
具体的な形を持っておくと、自社の候補を当てはめやすくなります。件数が多く、入力の書式がある程度そろっていて、後工程に確認がある業務としては、次のようなものが該当します。
- 取引先ごとに書式の違う帳票から、決まった項目を取り出して基幹システムへ渡す業務(請求書処理の自動化をAIで進める)
- 自由文のメールから数量や希望日を読み取り、管理表やスケジュールへ反映する業務(受発注業務をAIで自動化する)
- 定型の文書を読み、注意すべき箇所を一次的に洗い出して担当者へ渡す業務(契約書レビューをAIで行う)
いずれも、最後の判断は人が持ったまま、その手前の読み取りと下書きを機械へ寄せる形です。3つとも部門をまたいで似た構造を持つため、1本目で作った工程の分け方が2本目にも流用できます。
一方で、選んだ業務が既製ツールで足りることもあります。設定だけで済む範囲なら、自社で作る理由はありません。判断の観点と、既製から自作へ切り替えるときの条件は AIエージェントは自作か既製ツールか にまとめてあります。作らずに済ませられるかを先に確かめておくと、内製の対象を絞り込めます。
社内の業務システムをまたぐ候補の見分け方
前の節で挙げた3つは、いずれも書類を読む形の仕事です。候補になるのはそれだけではありません。あるシステムの画面で見た内容を別の台帳へ入れ直す作業、2つの台帳の値が合っているかを突き合わせる作業、社内から来た問い合わせに台帳を見て答える作業も同じ候補です。これらは書類ではなく、画面と台帳の間で起きます。
書類が介在しないだけで、一覧から外す理由にはなりません。年間の手作業時間、入力の形、間違いに気づく場所という物差しは、そのまま当てられます。むしろ件数の面では上位に来やすい形です。転記や突合は1件あたりの時間が短く、担当者の申告では負担として語られにくい一方、発生する件数は多くなります。候補一覧を作ったら、書類を扱う業務だけを数えていないかを見直してください。
ただし、この形の候補では先に確かめる項目が2つ増えます。1つは、そのシステムへ接続してよいかどうかです。画面を人が見るのと、外から接続して読み取るのとでは、社内の扱いが別になっていることがあります。もう1つは、読み取りまでを許すのか、書き込みまで許すのかです。書き込みまで許す場合は、どのレコードのどの項目までかを決めておかないと、必要以上の権限で動く形になります。
| 候補の形 | 先に確かめること | 最初の1本に向くか |
|---|---|---|
| システム間の転記 | 読み取り元と書き込み先の両方に接続してよいか。読み取りだけで足りるか | 向く。読み取りと下書きまでに範囲を狭めれば1本目にできる |
| 台帳どうしの突合 | 2つの台帳を同じ時点で見られるか。差分を最後に確認するのは誰か | 向く。出力が差分の一覧になるため、確認する場所を置きやすい |
| 社内からの問い合わせ対応 | 参照してよい台帳の範囲と、答えてよい内容の線引きが決まっているか | 条件つきで向く。回答の下書きまでとし、返すのは人が行う |
| 基幹システムへの書き込みを含む | 書き込んでよい項目の範囲と、止まったときに影響が及ぶ部門 | 向かない。2本目以降に回す |
接続の扱いが未定でも、選定を止める必要はありません。読み取りと下書きだけを先に作り、反映は人が既存の画面で行う形にすれば、接続をどこまで許すかの結論が出る前でも着手できます。前の節の4工程でいえば、読み取りと下書きを機械へ寄せ、確認と反映を人が持つ形です。書き込みの範囲が決まった後で、反映の工程だけを足せます。
この記事で扱うのは、対象業務を1つに絞るところまでです。選んだ候補が既存の業務システムとその周りのExcel運用の上に載っている場合は、そこから先にもう一段の線引きが要ります。どこまでを作り替え、どこを既存のまま残し、残す側とどうつなぐかは 業務システムのAI内製化 が続きになります。
表の最終行のように、止まったときの影響が自部門を超える候補は、最初の1本から外します。転記が止まれば、受け取る側の部門の作業も止まります。1本目は担当者が自分で直しながら進める段階なので、直している間に他部門の業務が待つ形になると、修正よりも説明に時間を取られます。この形の候補は、1本目で直し方が身についてから2本目以降に回します。
2本目以降をどう広げるか
1本目が動いたら、次の選び方は2つに分かれます。同じ部門の隣の業務へ横に広げるか、別部門の似た構造の業務へ移すかです。
| 広げ方 | 向く状況 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 同じ部門で横に広げる | 1本目の担当者がまだ自分で直せていない | 2本目も同じ人が主担当で動けるか。業務の合間に時間を取れるか |
| 別部門の似た業務へ移す | 1本目の担当者が自分で直せるようになった | 移す先の部門に、業務を説明できる人がいるか |
同じ部門で横に広げるのは、担当者が手順に慣れきっていない段階に向きます。読み取る項目や連携先が近いため、1本目で作ったものを流用でき、担当者は同じ形をもう一度なぞることになります。ここで2本目を1人で通せるかが、自分で直せる状態に届いたかどうかの判定になります。
別部門の似た業務へ移すのは、1本目の担当者が自力で修正まで回せるようになってからです。移すときに必要なのは、作ったものではなく、選定の手順です。候補一覧の列、4条件、外す業務の基準をそのまま渡し、移す先の部門に自分たちで候補を並べてもらいます。ここを飛ばして1本目の成果物だけを持ち込むと、その部門の業務に合わないまま使われなくなります。
どちらの広げ方でも、対象を増やすたびに外注へ戻すか自社で持つかの線引きが問われます。基盤の構築のように頻度が低く専門性の高い領域は外に残したままでよく、業務が変わるたびに直し続ける部分を社内が持ちます。費用の内訳から見た線引きは AI開発は外注か内製か で扱っています。
広げる速度は、動いている本数ではなく、直せる人の数で決まります。1人が5本を抱えると、その人の休みで5本とも止まります。2本目以降は、作る業務を増やすことと同時に、触れる人を増やすことを条件に入れてください。
まとめ:最初の一業務を選ぶときの要点
- 候補は言葉ではなく数字で並べる。月あたりの件数と1件あたりの所要時間を掛けた年間の手作業時間を主キーにする
- 最初の1本は、手順が言葉で説明でき、入力の書式がある程度そろい、間違いに人が気づけて、前後で成果を数えられるものを選ぶ
- 社外への最終回答を伴う業務、根拠を法令で問われる業務、月に数件しか起きない業務、現場の合意が取れていない業務は2本目以降に回す
- 落ちた候補は、次点・切り直し・前提側のどれかに分けて記録する。前提側に落ちたものは候補業務を見直しても変わらない
- 候補が絞り切れないときは、関わる部門の少なさで決める。着手前に、何件通ったら何を見て誰が判定するかまで置いておく
- 選んだ業務は読み取り・下書き・確認・反映に切り、人の確認を残す位置を先に決める。差し戻しの理由は記録して指示の修正に使う
- 2本目は、担当者がまだ自分で直せないなら同じ部門で横に、直せるようになったなら別部門へ移す。移すときは成果物ではなく選定の手順を渡す
Augueでは、対象業務の洗い出しから最初の1本の実装まで、現場の担当者と一緒に手を動かしながら進める支援を行っております。候補の並べ方から本番で使う形にするところまで一続きで見ますので、ご興味がある方は是非ご相談ください。
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どこまでを自社で持ち、どこを外注に残すかの線引きは 生成AI・AIエージェントの内製化とは、選んだ業務を検証で止めずに本番へ進める条件は 生成AIのPoCが本番で止まる理由 を参照してください。
よくある質問
対象業務は誰が決めるのがよいですか。現場と情報システム部門のどちらでしょうか。
候補を出して順位を付けるのは現場側、扱うデータと接続先を確認するのが情報システム側、という分け方が動きます。件数と所要時間は実際に手を動かしている人しか答えられず、接続してよいシステムかどうかは現場では判断できないためです。どちらか一方だけで決めると、選んだ後に「そのデータは外へ出せない」と差し戻される形になります。
候補業務の件数や所要時間のデータが社内に残っていない場合、どう見積もればよいですか。
全件を数え直す必要はありません。直近の1〜2か月分だけを実測し、繁忙期かどうかを担当者に確認して補正します。所要時間はストップウォッチで測るより、担当者に「1件で何分くらいか」を聞いて幅(最短と最長)で押さえるほうが早く、順位付けには十分です。厳密な数値が要るのは効果を報告する段階で、候補を並べる段階では桁が合っていれば足ります。
条件を満たす業務が1つも見つからないときはどうすればよいですか。
業務そのものではなく、業務の一部を切り出せないかを見ます。1つの業務全体では判断が入っていても、前半の情報収集や整形だけなら条件を満たすことがあります。それでも見つからない場合は、対象業務側ではなく前提の側に原因があることが多く、扱ってよいデータの線引きが未定だったり、候補の粒度が大きすぎたりします。
経営から特定の業務を指定されましたが、選定の条件に合いません。どう扱えばよいですか。
指定された業務を候補一覧に載せたうえで、他の候補と同じ列で並べて見せるのが現実的です。件数や確認の可否が並ぶと、順番を後ろにする判断の材料になります。それでも先に着手する場合は、成果が出るまでの回数が少ないことを事前に共有し、判定の時期を通常より遅く設定しておきます。
最初の1本は、業務を止めずに並行して動かすべきですか。
最初のうちは従来のやり方を残したまま並行して回すほうが安全です。出力を比べられるため、どこがずれるかを具体的に把握できます。ただし並行運用は担当者の作業が増えるので、いつまで並行するかを先に決めておきます。対象業務が何回通ったら片方を止めるか、という回数で区切ると判断しやすくなります。
