AI OCRの精度は、提供元の公表値で99%前後です。ただし公表値は提供元が選んだ帳票で測った値で、自社の請求書や注文書で同じ数字が出るとは限りません。業務で使う項目単位の正答率は、自社の帳票で測るまで分からないためです。読み取り精度を上げるには、自社の帳票で項目ごとの一致率と崩れ方ごとの誤りを数え、画像の状態に由来する誤りは取り込み条件と前処理で、書面の中身に由来する誤りは値どうしの検算と読んだ結果の解釈で減らします。

各社の公表値と取り込み条件の目安は、2026年11月時点の情報です。最新の値はリコーとPFUの各社のWebサイトでご確認ください。

この記事の答え

  • AI-OCRの精度は公表値で99%前後でも100%にはならないため、人の確認は必ず残る
  • 落ちた原因が画像の状態か書面の中身かで、精度を上げる打ち手が変わる
  • トライアルでは自社の帳票を崩れ方の内訳から集め、項目ごとに測って人の確認を外す範囲を決める

AI-OCRの読み取り精度はどれくらいか

AI-OCRの読み取り精度は、提供元の公表値で98〜99%台です。ただし同じ読み取り結果でも、どの帳票を使い、どの単位で数えるかによって数字は大きく変わります。提供元の数字と自社で出る数字が食い違うのは、多くの場合この測り方の違いが原因です。

提供元が公表している精度は98〜99%台

公表値は、測った帳票・数え方・時点を確かめてから読みます。2026年11月時点で、提供元が公表している値の例は次のとおりです。

公表元 公表している値 測った帳票 数え方 測った時点
リコー(自社のAI-OCR) 98.87% 様々な業種から集めた260社分の請求書(自社調べ) 文字単位か項目単位かの記載なし 2022年8月末
PFU(AI-OCR製品全般の解説) 99%以上 「多くの製品」としており、帳票の記載なし 記載なし 記載なし

どちらも、自社の帳票で同じ数字が出ることを示すものではありません。リコーの値は請求書に絞った評価で、手書きの申込書や注文書には当てはまりません。PFUも、99%以上の製品が多い一方で100%ではない点に注意が必要だとしています。

カタログの99%をそのまま当てにして導入を決めると、運用が始まってから人の確認が想定より多く残ります。候補の製品を比べるときは公表値を目安にとどめ、トライアルで自社の帳票を項目単位に測った数字で判断します。人の確認がどれだけ残るかは、測った数字をもとに後半の「全件確認から、一部だけ人へ回す運用へ移す目安」の節の手順で決めます。

文字単位の認識率と、項目単位の正答率は別の数字

文字単位の認識率は、1文字ずつ合っているかを数えた値です。請求書1枚に数百文字あれば、そのうち数文字を読み違えても認識率は高く出ます。一方、業務で使うのは「請求金額」「支払期日」のような項目の値です。金額の1桁を読み違えれば、その項目は誤りとして扱うしかありません。

項目単位の正答率は、項目の値が正解と完全に一致した割合です。さらに、人が見ずに通せるかを決めるのは、1枚の中の全項目が合った帳票の割合です。項目ごとの正答率が同じでも、項目が多い帳票ほどこの割合は下がります。

例 項目ごとの正答率 1枚の項目の数 全項目が合う帳票の割合(計算上)
例A 99% 10 約90%
例B 95% 10 約60%
例C 90% 10 約35%
例D 95% 20 約36%

表の割合は、項目ごとの誤りがそれぞれ独立して起きると置いて計算した値です。実際には、かすれた帳票では複数の項目が同時に落ちるため、この通りにはなりません。それでも、項目ごとの数字が高く見えても、人が見ずに通せる帳票の割合はかなり低くなり得ることは押さえておきます。

精度の数字は、自社の帳票の状態で決まる

同じAI-OCRでも、読ませる帳票の状態によって結果は変わります。活字の請求書が中心か、手書きの追記が多いか、コピーを重ねて薄くなった書面が混ざるかで、項目ごとの正答率は違ってきます。そのため、自社でどれくらいの精度が出るかは、自社の帳票を通して測るしかありません。測り方は、この後の節で順に見ていきます。

AI-OCRの精度を左右する4つの要素

AI-OCRの精度を左右するのは、画像の品質・文字の形式・帳票のレイアウト・読み取り方式の4つです。自社の帳票がどの要素で不利かを先に見ておくと、トライアルで重点的に測る帳票が決まります。

要素 精度が落ちる例 打ち手と詳しい節
画像の品質 取り込みの解像度が低い、白黒で薄い色が消える、傾き・裏写り 取り込み条件と前処理(「前処理で減らせる誤りと、減らせないもの」の節)
文字の形式 手書きの数字、続け字、かすれ・つぶれた活字 記入欄の作りと検算(「崩れ方ごとに、精度が落ちる原因を見つける」の節)
帳票のレイアウト 発行元ごとに欄の位置や名前が違う、明細が複数ページにまたがる 様式の登録か、意味で読む方式(同じ節)
読み取り方式 位置を登録して読む方式で様式が変わり、隣の欄の値を拾う 生成AIとの併用(「生成AIを重ねて、読み取り結果を確かめる」の節)

手書きや書式がばらばらの帳票でも使えるか

手書きや書式がばらばらの帳票でもAI-OCRは使えますが、活字の定型帳票より人が直す割合は高くなります。手書きの数字は1と7、0と6のような取り違えが残り、発行元ごとに書式が違う帳票は、位置を登録して読む方式だと様式の数だけ設定が要ります。手書きの申込書や報告書をどこまで自動で通せるかは、手書き帳票を扱った記事で詳しく見ています。

4つの要素は、帳票ごとに混ざり方が違う

1種類の帳票の中でも、要素ごとの不利さは帳票によって違います。同じ請求書でも、取引先Aはきれいな活字のPDFを印刷したもので、取引先Bは手書きの追記がある複写式、ということがあります。トライアルで「請求書」とひとまとめに測ると、どの要素で落ちたのかが分からなくなるため、後の節では崩れ方ごとに数え分けます。

AI-OCRの精度を上げる方法は、原因に合わせて選ぶ

読み取り精度を上げる方法はいくつかありますが、効く誤りがそれぞれ違います。どの誤りが多いかを数えてから、効く打ち手を選びます。

順番 打ち手 効く誤り 効かない誤り
1 原本の取り込み条件を見直す かすれ・つぶれ、桁や小数点の欠落 欄の名前の違い、書き方の違い
2 傾きの補正や裏写りの除去を挟む 傾き・ゆがみで隣の値を拾う誤り 発行元ごとの様式の違い
3 自社が配る様式の記入欄を枠で区切る 手書きの数字の取り違え 他社から届く帳票の誤り
4 値どうしの関係で検算する 確信度が高いまま誤った値 読めなかった箇所そのもの
5 生成AIで項目への当てはめを確かめる 欄の取り違え、1つの欄に2つの情報 かすれで消えた文字
6 人が直した記録で設定を見直す 様式の変更や新しい発行元による誤り 記録を取っていない期間の誤り

画像を整える打ち手と、読んだ値を確かめる打ち手

1〜3は画像や書面そのものを整える打ち手で、4〜6は読んだ値を確かめて直す打ち手です。画像を整えて減るのは、画像の状態に由来する誤りだけです。欄の名前が発行元ごとに違う、といった書面の中身に由来する誤りは、画像をいくら整えても減りません。どちらの誤りが多いかで、先に手を付ける側が決まります。

取り込み条件の目安はカラー・300〜400dpi

原本の取り込み条件は、まずカラーと解像度を見直します。PFUは、カラー画像(24bit)で読み取ることと、ファイルサイズとの兼ね合いから300〜400dpiを勧めています。白黒で取り込むと、薄い色の文字や、印影と重なった数字が消えることがあるためです。

ただし国税関係書類をスキャンして保存する場合は、解像度や階調について法令の要件があります。精度のために条件を変えるときは、保存要件を満たす範囲で決めます。

打ち手を足したら、同じ帳票で測り直す

打ち手の効果は、足す前と同じ検証用の帳票で比べて確かめます。帳票を入れ替えて測ると、精度が上がったのが打ち手のおかげなのか、帳票が読みやすくなっただけなのかが分かりません。検証用の帳票を固定しておく理由は、後の節で扱います。

精度の測り方と、落ちる原因の見取り図

AI-OCRの精度は1つの数字では表せません。どの項目が、どの崩れ方の帳票で落ちているかまで分けて、初めて次に何をするかが決まります。先に全体像を示します。各行の詳しい扱いは、この後の節で順に見ていきます。

見るもの どう測るか 落ちたときに疑うこと
項目ごとの一致率 項目ごとに、正解と一致した件数を検証枚数で割る 特定の項目に偏っていないか。欄の名前の拾い方や位置の取り方
1枚まるごとの一致率 全項目が合った枚数を検証枚数で割る 項目数が多いほど下がる。人の確認をどこまで外せるか
空欄への書き込みと取りこぼし 記載の無い欄に値が入った件数と、記載があるのに空で返った件数を別々に数える 後工程の突き合わせで気づけるか、すり抜ける側か
崩れ方ごとの一致率 手書き、かすれ、傾き、書式崩れ、印影との重なり、明細の折り返しに分けて数える 画像の状態に由来するか、書面の中身に由来するか
検証データの内訳 崩れ方の種類ごとに何件入っているかを数える 弱い崩れ方が数件しか入っていなければ、その部分は測れていない
全体へ戻した一致率 崩れ方ごとの一致率に、自社に届く帳票全体での割合を掛けて足す 検証の平均をそのまま使っていないか。割合を数えた時期がずれていないか

落ちる原因は、大きく2つに分かれます。1つは画像の状態に由来するもので、傾き、かすれ、取り込みの細かさがこれに当たり、前処理で減らせます。もう1つは書面の中身に由来するもので、欄の名前が発行元ごとに違う、1つの欄に2つの情報が書かれている、といった場合です。こちらは画像を整えても変わらず、読んだ結果を解釈する工程で扱います。どちらがどれだけを占めるかは、崩れ方ごとに数え分けないと分かりません。

カタログの認識率が自社の判断材料にならない理由

AI-OCRの導入を検討すると、まず出てくるのは提供元が示す認識率です。ただ、その数字をそのまま自社の判断へ持ち込むと、運用が始まってから想定と違う結果になります。理由は2つあります。

測った帳票の顔ぶれが違う

示されている数字は、提供元が用意した帳票の集まりに対する結果です。自社に届く帳票のうち、手書きの追記が入るもの、コピーを重ねて薄くなったもの、発行元が独自の様式で作っているものがどれだけ混ざっているかは、そこには反映されていません。

数え方が業務の使い方と違う

文字単位の一致率は高く出ますが、業務で使うのは項目の値です。金額の1文字を読み違えれば、文字単位では99%を超えていても、その項目は誤りとして扱うしかありません。

判断できる形にするには、自社の帳票で、自社が使う数え方で測ります。以下は、その手順です。ここでは、読み取り方式が決まった後、あるいは候補を絞る段階での測り方に絞ります。

検証に使う帳票は、崩れ方の内訳を決めてから集める

集め方を間違えると、その後の数字はすべて意味を失います。担当者に「読み取りを試したいので何枚か出してください」と頼むと、状態のよい帳票が集まります。渡す側は無意識に、きれいに読める書面を選ぶためです。

集めるときは、次の順で進めます。

  1. 直近の数か月分から期間を区切って、対象にする帳票の範囲を決める。月ごとに届く帳票の顔ぶれが変わるなら、その周期を含む長さにする
  2. その範囲の中で、崩れ方の種類ごとに何件あるかを数える。手書きの追記、印影との重なり、傾き、薄さ、独自様式などで分ける
  3. 種類ごとに件数を割り当てて抜き出す。数の少ない崩れ方は、割合どおりに抜くと検証に1〜2件しか入らないため、意図して多めに入れる
  4. 正解の値を業務担当者が作る。読み取り結果を見てから作ると、それに引きずられるため、先に作る
  5. 作った組をファイルとして残す。設定を変えるたびに測り直すため、対象は固定する

3番目で意図的に崩れた帳票を多く入れると、全体の一致率は実運用より低く出ます。それで構いません。ここで見たいのは全体の平均ではなく、どの崩れ方で落ちるかだからです。全体の数字は、崩れ方ごとの結果と実際の混ざり具合から後で組み立てられます。

数えるのは項目ごとの一致率と、1枚まるごとの一致率

読み取り結果は、項目の単位と帳票の単位の両方で数えます。片方だけでは、手を入れる先も、人の確認をどこまで外せるかも決まりません。

数える単位 出す数字 何が分かるか
項目ごとの一致率 項目ごとに、正解と一致した件数を検証枚数で割る どの項目が弱いか。直す対象が決まる
1枚まるごとの一致率 全項目が合った枚数を検証枚数で割る 人が見ずに通せる枚数の割合。運用の形はこちらで決まる
空欄への書き込み 記載が無い項目に値が入った件数 突き合わせで見つかりにくい誤り。件数を別に持つ
取りこぼし 記載があるのに空で返った件数 後工程で気づける誤り。上の行と分けて数える

項目ごとの一致率で、直す対象を決める

全体の数字が高くても、内訳を見ると特定の項目だけが落ちていることがあります。日付と金額は問題なく、取引先名だけが落ちている、という形です。その場合に手を入れるのは読み取り全体ではなく、取引先名の扱いです。

空欄への書き込みは別枠で数える

記載の無い欄に値が入る誤りは、後工程の突き合わせをすり抜けやすく、気づいたときには台帳に紛れています。取りこぼしとは影響が違うため、同じ「不一致」にまとめません。一致の条件をどう決めるか、誤りの種類ごとにどこまで許すかは、精度の合格ラインと合わせて決めます。

崩れ方ごとに、精度が落ちる原因を見つける

全体の一致率が下がったとき、原因は帳票の崩れ方に偏っていることがほとんどです。種類ごとに数え分けると、次に何をするかが決まります。

崩れ方 出やすい誤り 先に試すこと
手書き 数字の取り違え(1と7、0と6、3と8)、続け字での脱落 記入欄が枠で区切られているか。桁数や合計との関係で検算できるか
かすれ・つぶれ 文字の欠落、桁の脱落、小数点の消失 原本の取り込み条件を変えて比べる。原本が薄い場合は再発行を依頼できるか
傾き・ゆがみ 位置で読む方式で欄がずれ、隣の値を拾う 傾きの補正を挟む。位置ではなく見出し語からの相対で取る
書式崩れ(発行元ごとの差) 欄の取り違え、項目の取りこぼし 様式の登録を増やすか、意味で読む方式へ寄せる
印影や手書きの追記との重なり 重なった箇所の誤読、金額の桁の誤り 重なる位置が決まっているなら除外する。毎回違うなら人へ回す対象にする
複数ページ・明細の折り返し 行の分断、合計の二重計上 明細の合計と合計欄の一致を機械で確かめる

手書きは、記入欄の作りで減らせることがある

自社が様式を配っている帳票なら、枠で区切った記入欄にするだけで誤りが減ります。他社から届く帳票は変えられないため、こちらは検算で捕まえる設計にします。

かすれは、読み取りより前の工程に原因がある

複合機の設定が事務所ごとに違い、片方だけ薄く取り込まれていた、という形はよくあります。設定を変えて同じ帳票を取り込み直し、結果が変わるかを見ると、原因が取り込みの側にあるかどうかが分かります。

傾きと書式崩れは、読み取り方式の限界に当たる

位置を登録して読む方式は、様式が変わると同じ場所から違う値を拾います。誤りではなく別の値を返すため、確信度も高いまま出てきます。ここは前処理では埋まらず、意味で読む方式との併用を検討する範囲です。

崩れ方ごとの結果を、自社の帳票全体の数字に戻す

検証用の帳票は数の少ない崩れ方を多めに入れて集めているため、結果をそのまま平均すると実運用より低い数字になります。運用の判断に使うのは、実際に届く帳票の混ざり具合に戻したあとの数字です。

戻し方は、崩れ方ごとの一致率に、自社に届く帳票全体でのその崩れ方の割合を掛けて足すだけです。使う数字は次の3つです。

使う数字 どこから取るか 気をつけること
崩れ方ごとの割合 検証用の帳票を抜き出す前に、対象の帳票全体の内訳を数えたときの値 月や時期で変わる。数えた期間を一緒に残す
崩れ方ごとの一致率 検証の結果を崩れ方の種類ごとに数えたもの 件数の少ない崩れ方ほど値がぶれる
どの単位で見るか 項目ごとの一致率か、1枚まるごとの一致率か 2つを混ぜて足さない。単位ごとに別々に戻す

戻した数字は幅で受け取る

割合の小さい崩れ方は検証に入れた件数も少なく、1件の当たり外れで一致率が大きく動きます。その崩れ方を高めに見た場合と低めに見た場合の両方で計算し、全体がどの範囲に収まるかを見ます。幅が広すぎて判断できないなら、その崩れ方の件数を足して測り直します。

割合のほうも時期によって動く

新しい発行元が増える、特定の時期だけ手書きの帳票が増える、といった変化で帳票の内訳は変わります。そのたびに全体の数字も変わるため、一致率を測り直すときは、割合のほうも数え直します。この戻した数字が、人の確認をどこまで狭められるかを見るときの出発点になります。

前処理で減らせる誤りと、減らせないもの

読み取りの前に画像を整える工程を挟むと、一定の誤りは減ります。ただ、どの誤りが減るかは限られています。

前処理で減らせるのは画像の状態に由来する誤り

傾きの補正、白黒に変えるときの濃さの境目、読み取りの細かさ、余白や裏写りの除去で減るのは、画像の状態に由来する誤りです。同じ帳票で条件を変えて測り、一致率の変化を見れば効果が確かめられます。

書面の中身に由来する誤りは前処理では減らない

欄の名前が発行元ごとに違う、1つの欄に2つの情報が書かれている、備考欄に支払条件が文章で書かれている、といった場合は、画像をいくら整えても位置から値は取れません。どちらの誤りが多いかを確かめずに前処理を作り込むと、効果の出ない調整に時間を使うことになります。まず崩れ方ごとの数字を見て、画像側の問題がどれだけを占めるかを確かめてから着手します。

生成AIを重ねて、読み取り結果を確かめる

書面の中身に由来する誤りは、文字を読む工程ではなく、読んだ結果を解釈する工程で扱います。読み取った文字列と位置の情報を渡し、どの値がどの項目に当たるかを判定させる形です。

重ねるときに決めておくこと

生成AIを足すときは、補ってよい範囲と、測り直しの手順を先に決めます。

  • 文字そのものを推測で補わせない。読めなかった箇所は空で返し、人へ回す対象にする
  • 判定の根拠として、その値が書面のどこから来たかを返させる。後で照らし合わせられる形にしておく
  • 生成AIを足した状態で測り直す。足した後の数字を、足す前と同じ検証データで比べる

推測での補完を許すと、検証の数字が信用できなくなる

読めなかった桁を前後から埋めた結果がたまたま正解と一致すると、一致率は上がります。しかし本番では、同じ埋め方が誤った値を作ります。読めなかったことを読めなかったと返す挙動のほうが、運用では扱いやすくなります。

確信度だけに頼らず、値どうしの関係で確かめる

多くのAI-OCRは項目ごとに確信度(読み取り結果にどれだけ自信があるかを示す数字)を返します。ただ、この数字だけで人へ回す対象を決めると、取りこぼしが出ます。

確信度が高いまま誤る場面がある

様式が変わって隣の欄を読んだ場合、文字としてはきれいに読めているため、確信度は下がりません。確信度が低い項目だけを人に回す設計では、この種の誤りがそのまま後工程へ流れます。

合計やマスタとの照合で検算する

確信度と合わせて使うのは、値どうしの関係です。明細の金額の合計が合計欄と一致するか、税額が税率と整合するか、日付が支払期日より前か、取引先名が自社のマスタに存在するか。こうした条件は機械で確かめられ、確信度が高いまま誤った値も捕まえられます。

読み取りから検算を経て、人が確認する範囲を狭めていく流れ 帳票を読み取り、確信度と値どうしの関係で検算する。通った分は後工程へ渡し、合わない分と読めなかった箇所だけを人が確認する。直した内容を崩れ方ごとに数え、人へ回す範囲と検算の条件を見直す。 ・確信度だけでなく、値どうしの関係で確かめてから人へ回す ・人が直した記録が、次の期間の検算の条件になる 読み取り 原本の取り込み ・読み取りの細かさ・濃さ 文字の読み取り ・項目ごとの値と確信度 検算 値どうしの関係 ・明細の合計と合計欄 ・マスタとの照合 振り分け ・通った分は後工程へ ・合わない分は人へ 人の確認 合わない分を直す 読めない箇所を埋める 見直し 直しを記録 ・崩れ方ごとに数える 範囲の見直し ・検算の条件へ反映
検算に通った分はそのまま流し、合わない分と読めない箇所だけを人が確認します。
直した記録を崩れ方ごとに数え、人へ回す範囲を定期的に見直します。

全件確認から、一部だけ人へ回す運用へ移す目安

運用の始めは全件を人が見る形にします。この期間は確認の手間が残りますが、検証では出てこなかった崩れ方が見つかる時期でもあります。ここで得た記録が、範囲を狭める根拠になります。

範囲を狭める判断は、次の3つが揃ったときに行います。

見るもの 確かめること 満たさないときの扱い
直しの記録 一定期間、人が直した件が特定の項目や発行元に偏っているか 全体に散っているなら、まだ範囲は狭めない
検算での捕捉 直した件のうち、機械の検算でも捕まえられた割合 検算で捕まらない誤りが残るなら、その条件を足してから狭める
誤りが通ったときの影響 見逃したときに後工程で気づけるか、外部へ出るか 外部への送付や支払に直結する項目は、範囲に含めない
人の確認を外すかどうかの判断 直しの偏り、検算での捕捉、誤りが通ったときの影響の3つの問いで、人の確認を外せる範囲を決める ・上から順に答え、最初に右へ抜けたところで扱いが決まります 人が直した件が特定の 項目や発行元に偏って いるか 全件確認を続ける ・読み取り方式か取り込み条件を見直す いいえ はい 直した件の多くを機械 の検算でも捕まえられ ているか 検算の条件を足してから測り直す いいえ はい その項目の誤りが支払 や外部への送付に直結 するか その項目は確認に残す はい いいえ 偏りのある範囲だけ人へ回し、残りは自動 で通す ・直しの件数の推移を毎月見る
直しが特定の項目や発行元に偏っていることが、確認を外す最初の条件です。

偏りが無いうちは、どこを外しても誤りが漏れる

直しが特定の発行元に集中しているなら、その発行元だけを人の確認に残し、残りを自動で通す形にできます。偏りがなく全体に散っている状態では、どこを外しても同じ割合で誤りが漏れます。人の確認を外してよいのは、直しの偏りがはっきり見えてからです。

人の目でしか見つかっていない誤りを数える

人が直した件のうち、機械の検算でも不一致として出ていたものがどれだけあるかを数えます。この割合が低ければ、人の目でしか見つかっていない誤りが多いということで、確認を外すと素通りします。

影響の重い項目は精度が足りていても残す

支払金額や振込先のように、誤ると外部への連絡や取り消しが必要になる項目は、他の項目の精度が十分でも確認に残す判断があり得ます。どの工程を機械に任せ、どこに人の承認を置くかは、業務全体の工程を並べて決めます。

運用が始まってからも、読み取り精度を測り直す

一度測って終わりにすると、精度は静かに下がります。取引先が様式を変える、新しい発行元が増える、複合機を入れ替えて取り込みの条件が変わる。どれも通知されないまま起きます。

測り直すために残しておく3つの記録

検証に使ったデータと正解の組、崩れ方ごとの結果、人が直した件の記録を残しておきます。この3つがあれば、数か月後に同じ条件で測って比べられます。

直しの件数の推移で変化に気づく

日常の運用では、人が直した件数の推移を見ておくと変化に気づけます。ある月から特定の発行元の直しが増えたなら、様式が変わった可能性が高く、その時点で様式の登録か指示の内容を見直します。仕組みを社内で持ち続ける場合は、誰が見直すかも決めておきます。

まとめ:AI OCRの精度は自社の帳票で測り、原因に合わせて上げる

  • AI OCRの精度は公表値で98〜99%台だが、提供元が選んだ帳票で測った値で、自社の帳票の項目単位の正答率とは別物。100%にはならず、人の確認は残る
  • 精度を左右するのは画像の品質・文字の形式・帳票のレイアウト・読み取り方式の4つ。取り込みはカラー・300〜400dpiを目安に、保存要件と両立させる
  • 項目ごとの正答率が高く見えても、全項目が合う帳票の割合は項目が多いほど下がる
  • 精度を上げる打ち手は、画像を整えるものと読んだ値を確かめるものに分かれる。どちらの誤りが多いかを数えてから選ぶ
  • 検証用の帳票は枚数から決めず、崩れ方の内訳から決める。数の少ない崩れ方は意図して多めに入れる
  • 数えるのは項目ごとの一致率と1枚まるごとの一致率の両方。空欄への書き込みと取りこぼしは分けて数える
  • 崩れ方ごとの一致率は、実際に届く帳票での割合を重みにして全体へ戻す。件数の少ない崩れ方は幅を持たせて見る
  • 読めなかった箇所を推測で埋めさせない。確信度だけでなく、合計との一致やマスタとの照合で確かめる
  • 全件確認から範囲を狭めるのは、直しの偏り、検算での捕捉、誤りが通ったときの影響の3つを確かめてから
  • 検証データと崩れ方ごとの結果、直しの記録を残し、様式や取り込み条件の変化に合わせて測り直す

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よくある質問

提供元が示す認識率は、自社の帳票でも同じように出ますか?

同じになるとは限りません。確かめるには、その数字の測り方を提供元に聞きます。文字単位か項目単位か、どんな種類の帳票を何枚使ったか、手書きやスキャンの粗い書面が含まれていたかの3点です。答えが自社の帳票の状態と離れていれば、その数字は候補を比べる目安にとどめ、判断は自社の帳票で測った結果で行います。

検証にはどれくらいの枚数を集めればよいですか?

一律の枚数は出せません。決め方としては、崩れ方ごとに何件ずつ入っているかで考えます。手書きの追記が入る帳票が全体の1割なら、その1割の中で何件あれば傾向が見えるかを置き、そこから全体の枚数を逆算します。全体で何百枚あっても、弱い崩れ方が数件しか入っていなければ、その部分の精度は測れていません。

検証の結果が要件に届かなかった場合、そこで中止すべきですか?

全体の数字だけで判断すると、使える範囲まで捨てることになります。先に、どの発行元・どの崩れ方で落ちているかを見ます。特定の少数の発行元だけが原因なら、その分を手入力に残して残りを自動化する形が取れます。全体に薄く誤りが散っている場合は、読み取り方式か原本の取り込み条件の側に原因があるため、対象を狭めても改善しません。

サービス提供元に精度の保証を求めることはできますか?

帳票の状態によって結果が変わるため、数値での保証が契約に付くことは多くありません。求めるとすれば、自社の実物を使った事前検証の機会と、その結果の開示です。契約前に自社の帳票を数十枚通してもらい、項目ごとの結果を受け取れるかを確認します。

原本の取り込み条件は、法令上の保存要件と関係しますか?

関係します。国税関係書類をスキャンして保存する場合、読み取りの細かさや階調について要件が定められているため、精度の都合だけで条件を決められません。精度を上げるために条件を変えるときは、保存要件を満たす範囲かを先に確認します。