n8n(エヌエイトエヌ)とは、「ノード」と呼ぶ部品を画面上でつなぎ、アプリやシステムの間の処理を自動で流すワークフロー自動化ツールです。ドイツで開発されており、自社のサーバーに入れて使うセルフホストと、n8nの会社が運用するクラウド版の2つの形で提供されています。業務の自動化に加えて、生成AIを呼び出すノードも用意されており、AIエージェントの土台として使われることも増えています。
n8nは無料でも使えます。セルフホストの無料版(Community Edition)はソフトウェアの利用料がかからず、クラウド版もクレジットカードを登録せずに無料トライアルで試せます。有償のプランは、ワークフローを動かした回数で料金が決まります。
この記事の料金と利用条件は、2026年9月25日時点で公式の料金ページ(n8n Plans and Pricing)と利用条件のページ(License FAQ)で確認できた情報です。変わりやすいため、契約の前にはこの2つのページで最新の内容をご確認ください。
n8nの仕組み|ノードをつないでワークフローを作る
n8nでは、1つの自動化の流れを「ワークフロー」と呼びます。ワークフローは、きっかけになるトリガーと、その後に続く処理のノードでできています。
- 毎日決まった時刻になったら動く(Schedule Trigger)
- 外部から呼び出されたら動く(Webhook)
- メールやフォームの受信、表計算シートの更新をきっかけに動く
トリガーの後ろには、データを取りに行く、条件で分ける、形を整える、別のシステムへ書き込む、チャットへ知らせる、といったノードを並べます。前のノードが出したデータを次のノードが受け取って処理するので、「何をきっかけに、どのデータを、どこへ渡すか」を画面上の線で追えるのが特徴です。
用意された連携ノードが無いサービスでも、HTTP Requestノードを使えばAPIを直接呼び出せます。細かい加工が必要な場面では、JavaScriptやPythonを書けるCodeノードも使えます。画面で組める範囲とコードで書ける範囲の両方を持っている点が、ノーコードだけのツールとの違いです。
n8nでできること
できることを業務の性質で分けると、次のようになります。
| 処理の性質 | 例 | n8nでの扱い |
|---|---|---|
| 決まった時刻に動かす処理 | 毎朝の集計、定期レポートの作成、別のシステムの処理を起動する | Schedule Triggerで起動する。時刻とタイムゾーンを画面で指定できる |
| システム間でデータを受け渡す処理 | フォームの回答を顧客管理システムへ登録する、受注データを表計算シートへ転記する | 連携ノードかHTTP Requestノードでつなぐ |
| 条件で振り分ける処理 | 金額や種類によって通知先や処理を変える | IFノードやSwitchノードで分岐させる |
| 文章を読んだり作ったりする処理 | 問い合わせの分類、要約、返信文の下書き | AI連携のノードで生成AIを呼び出す |
| 人の確認を挟む処理 | 下書きを担当者に見せ、承認されたら送る | 承認を待つノードやチャットへの通知で、人が判断するまで先へ進めない |
上の3行は、手順を書き切れる処理です。n8nが最も得意とするのはこの領域で、一度組めば同じ入力に対して毎回同じ結果を返します。
4行目のAI連携では、生成AIのモデルを呼ぶノードに加えて、AIに道具(検索や社内システムの呼び出し)を持たせて判断させるAIエージェントのノードもあります。ただし、AIの出力は毎回同じにはなりません。どこまでをAIに任せ、どこからを決まった手順の処理にするかは、ワークフローを組む前に決めておきます。
n8nの活用例
表の処理を組み合わせると、実際の業務では次のようなワークフローになります。どれも、きっかけ(トリガー)と、その後に並べるノードで説明できます。
問い合わせの一次仕分け
問い合わせフォームの受信をきっかけに動き、AI連携のノードで内容を分類・要約して、種類ごとの担当のチャットへ知らせます。緊急度が高いと判定したものだけは、担当者へ直接知らせます。AIの分類は外れることがあるため、最初の数週間は分類の結果を人が見て、振り分けの条件を直していきます。
受注データの転記
毎朝決まった時刻に動き、受注を管理するシステムから前日分のデータをAPIで取り出して、表計算シートへ追記し、件数をチャットへ知らせます。手作業の転記をなくせるうえ、件数の通知が届かない日は処理が止まっていると気づけます。
申請の承認の回付
申請フォームの受信をきっかけに動き、金額によって処理を分けます。一定額より小さい申請はそのまま台帳へ登録し、それ以上の申請は上長の承認を待ってから登録します。承認を待つ間はワークフローが先へ進まないため、承認の前に登録されることはありません。
定期レポートの下書き
毎週月曜に動き、複数のサービスから数値を集めて表の形に整え、AI連携のノードで先週との違いを文章に下書きします。担当者は下書きを確かめてから共有します。数字は集めた値をそのまま使い、AIには文章づくりだけを任せると、数字の誤りが入りにくくなります。
テンプレートとMCPへの対応
n8nの公式サイトには、ワークフローのテンプレート集があります。n8n Workflow Automation Templatesには、2026年9月25日時点で12,571件のテンプレートが公開されており、AI、営業、IT運用、マーケティング、書類の処理などの分類で探せます。テンプレートは作り方の見本として使い、認証情報や送信先、送る文面は自社用に置き換えてから動かします。
AIとの連携では、MCP(AIと外部の道具をつなぐ共通の規格)にも対応しています。MCP Server Triggerのノードを使うと、n8nのワークフローを、外部のAIから呼び出せる道具として公開できます。反対にMCP Clientのノードを使うと、外部のMCPサーバーが公開している道具を、ワークフローの手順の1つとして使えます。
クラウド版とセルフホストの違いと料金プラン
n8nの提供形態は、クラウド版と、自社のサーバーに入れるセルフホストに分かれます。有償のプランは実行回数で料金が決まり、セルフホストの無料版はソフトウェアの利用料がかかりません。ここでいう実行回数とは、ワークフローを最初から最後まで1回動かすことを1回と数えるもので、途中のノードの数や処理するデータの量では増えません。
| プラン | 形態 | 料金(年払い時の月額) | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| Starter | クラウド版 | 20ユーロ | 月2,500回の実行、同時に動かせる実行は5つまで |
| Pro | クラウド版 | 50ユーロ | 月10,000回の実行、同時に動かせる実行は20まで、管理者の権限設定、7日分の利用状況の分析 |
| Business | セルフホスト | 667ユーロ | 月40,000回の実行、SSO(社内アカウントでのログイン)、Gitでの版管理、本番と検証の環境の分離 |
| Enterprise | クラウド版またはセルフホスト | 個別見積 | 実行回数は相談、外部の秘密情報の保管庫との連携、ログの外部送信、サポートの応答時間の保証 |
| Community Edition | セルフホスト | 無料 | ソフトウェア自体は無料。サーバー代と運用の手間は自社で持つ |
表は冒頭で挙げた公式の料金ページの内容です。月払いにすると金額が変わり、プランの区切りや含まれる機能も改定されることがあるため、契約前に最新の内容を確かめてください。
Businessは、公式の料金ページで従業員100人未満の会社向けとされています。従業員20人未満の会社は、Start-up Planの対象になればBusinessが50%引きになります。
n8nは無料で使えるか
無料で使う方法は2つあります。1つはセルフホストの無料版で、ソフトウェアはGitHubで公開されており、利用料はかかりません。かかるのはサーバー代と、更新や復旧を担う人の手間です。
もう1つはクラウド版の無料トライアルです。クレジットカードの登録は要らず、Proと同じ機能を試せます。ただし、トライアル中は実行が1,000回まで、同時に動かせる実行は5つまで、1回の実行は180秒までに制限されています。本番の業務で使い続けるなら、セルフホストの無料版か、クラウド版の有償プランのどちらかを選ぶことになります。
クラウド版とセルフホストはどちらで始めるか
迷ったら、まずクラウド版で小さく始めて、使い道が固まってからセルフホストを検討する順番が無難です。クラウド版はサーバーの用意も更新作業も要らず、その日のうちに試せます。
セルフホストが向くのは、次のどれかに当たるときです。
- 業務データを社外のサービスに置けない社内規程がある
- 実行回数が多く、回数で課金されると費用が読めない
- サーバーの更新やバックアップを担当できる人が社内にいる
セルフホストの無料版は、ソフトウェアの利用料はかかりませんが、サーバー代、バージョンを上げる作業、落ちたときの復旧を自社で持ちます。この手間を担う人を決めないまま始めると、担当者の異動をきっかけに誰も直せない仕組みが残ります。
n8nの使い方|最初のワークフローを動かすまで
n8nの使い方は、クラウド版でもセルフホストでも画面の操作は同じです。ここでは例として、「毎朝9時に、表計算シートにある前日の問い合わせの件数を数えて、チャットへ送る」ワークフローを作ります。
- クラウド版は公式サイトでアカウントを作り、無料トライアルを始める。セルフホストは次の節の手順で起動し、ブラウザで開く
- 画面左上の作成ボタンから「Workflow」を選び、新しいワークフローを作る
- 「Add first step…」を選び、トリガーとして「Schedule Trigger」を置く。毎日9時に動くよう設定し、タイムゾーンが日本になっているかを確かめる
- 表計算シート(例: Google Sheets)のノードをつなぐ。初めて使うサービスでは認証情報(Credential)を登録し、読み込むシートと範囲を指定する
- 前日の行だけを残すノード(Filter)と、件数を数えるノード(Summarize)をつなぐ。細かい加工が要るときはCodeノードで書く
- チャット(例: Slack)のノードをつなぎ、送信先のチャンネルと本文を指定する。本文には前のノードが出した件数を差し込む
- 「Execute Workflow」で試しに動かし、各ノードが受け渡すデータを1つずつ確かめる
- 失敗したときの通知先を決める。「Error Trigger」で始まるエラー用のワークフローを別に作り、チャットやメールへ知らせる
- 「Publish」を押して、決まった時刻に自動で動くようにする
- 最初の数日は、実行の記録(Executions)を毎日見る
新しく作ったワークフローは、「Publish」を押すまで自動では動かず、手で動かしたときだけ動きます。試しに動かして結果が合っていても、公開し忘れると翌朝には何も届きません。
手順の中で見落としやすいのは8番です。n8nは、失敗してもこちらから見に行かない限り気づけません。公開する前に、止まったときに誰へ知らせるかを決めておきます。
最初に選ぶ業務の条件
最初の1本は、失敗しても取り返しがつき、結果の正しさをすぐ確かめられる業務から選びます。社内向けの日次レポートや、転記作業の自動化がこれに当たります。取引先へメールを送る、会計システムへ書き込むといった外に影響が出る処理は、2本目以降に回します。
セルフホストの始め方|Dockerで起動する
セルフホストで試すなら、Dockerを使うのが手軽です。パソコンやサーバーにDockerを入れたうえで、データを残す場所を作り、n8nを起動します。
docker volume create n8n_data
docker run -it --rm \
--name n8n \
-p 5678:5678 \
-e GENERIC_TIMEZONE="Asia/Tokyo" \
-e TZ="Asia/Tokyo" \
-e N8N_ENFORCE_SETTINGS_FILE_PERMISSIONS=true \
-v n8n_data:/home/node/.n8n \
n8nio/n8n
起動したら、ブラウザで http://localhost:5678 を開き、最初の管理者のアカウントを作ります。コマンドはn8n Docs|Install with Dockerの手順を、タイムゾーンを日本にして書いたものです。版が上がると設定の項目が変わることがあるため、入れる前にこのページで最新の手順を確かめてください。
試しに動かす段階と、本番で使う段階では準備が違います。
- データの保存先は、初期設定では1つのファイルにまとめる形(SQLite)で、PostgreSQLに切り替えることもできる
- データを残す場所には、認証情報を暗号化するキーも入る。この場所をバックアップから外すと、復旧しても認証情報を読めなくなる
- 社外から使うなら、通信の暗号化(HTTPS)とログインの保護を設定する
公式の文書も、セルフホストには技術的な知識が要り、設定を誤るとデータの消失や情報の漏えい、停止につながると注意しています。試しに動かすのは1日で済みますが、本番で使うなら、サーバーの更新とバックアップを担う人を決めてから始めます。
Zapier・Make・Difyとの違い
n8nと比べられることが多いツールは、Zapier、Make、Power Automate、Difyです。どれも業務を自動化しますが、得意なことが違います。
| ツール | 主な特徴 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| n8n | セルフホストができる。コードも書ける。実行回数で課金され、途中の処理の数では増えない | 処理の段数が多い自動化、社外にデータを出せない業務、AIエージェントの土台 |
| Zapier | 連携できるサービスの数が多く、設定が簡単。クラウドでのみ使える | つなぐ先が多いが処理は単純な、部署単位の小さな自動化 |
| Make | 画面上で分岐や繰り返しを組みやすい。クラウドでのみ使える | データを細かく加工する中規模の自動化 |
| Power Automate | Microsoft 365と深くつながる | Microsoft 365を中心に業務を回している会社の自動化 |
| Dify | 生成AIのアプリやチャットボットを作ることに特化している | 社内文書を読んで答えるチャットなど、AIとの対話が中心の用途 |
表の中で、選ぶときの決め手になりやすいのは課金の数え方です。ZapierやMakeは、ワークフローの中の処理の1つ1つを数えて課金する体系が中心です。処理の段数が多い自動化では、同じ業務でもn8nのほうが費用を見積もりやすくなります。
Difyとの関係は、どちらか一方を選ぶものではありません。Difyは「AIに何を聞き、どう答えさせるか」を作り込む道具で、n8nは「いつ動かし、どのシステムとつなぐか」を組む道具です。AIとの対話が主役ならDify、システム間の連携が主役ならn8nと考え、両方を組み合わせる構成もあります。
商用利用の範囲と注意点
n8nのセルフホスト版は、ソースコードが公開されていますが、一般的なオープンソースとは利用条件が違います。n8nは「Sustainable Use License」という独自の利用条件を採っており、自社の業務のために使う範囲で無料で使えます。
冒頭で挙げた公式の利用条件のページでは、次の使い方を認めています。
- 自社の業務を回すためにn8nを使う
- 自社の環境で顧客向けの自動化を作る(顧客がワークフローを作ったり編集したりできない場合に限る)
- ワークフローの作成・設定・保守を有償のサービスとして提供する
一方で、n8nを基盤として顧客にワークフローを作らせるサービス、自社製品の中で外部の利用者にワークフローを組ませる使い方、n8nの表示を外して自社製品として提供する使い方は認めていません。社内の業務自動化に使う限り商用利用の制約に当たることはまれですが、顧客向けの製品に組み込む計画があるなら、設計の前に利用条件を確かめます。判断がつかない場合は、有償のライセンスの対象になるかをn8nの会社に問い合わせるのが確実です。
使う前に知っておきたいデメリット
利用条件のほかに、導入前に分かっておきたい点が3つあります。特にセルフホストでは、運用の手間を担う人を先に決めておく必要があります。
- 画面は英語が中心で、公式の文書も英語が主体
- 連携ノードの数はZapierより少なく、無いものはAPIを直接呼ぶ設定が要る
- セルフホストでは、バージョンを上げる作業と、落ちたときの復旧を自社で持つ
n8nとAIエージェントの役割分担
n8nにはAIエージェントのノードがあり、n8nの中だけでAIの判断まで完結させることもできます。ただ、業務で本番運用する構成では、n8nに任せる処理とAIエージェント側に置く処理を分けたほうが、壊れたときに原因を探しやすくなります。
分け方の目安は、毎回同じ結果になるべき処理はn8n、文章を読んで判断する・文章を作る処理はAIエージェントです。
セルフホストで本番運用する前に決めること
n8nのセルフホストを本番で回すときは、ワークフローを作る前に次の3点を決めておきます。どれも、動き始めてから決めようとすると、止まったときや人が入れ替わったときに困る項目です。
| 決めること | 決めないとどうなるか | 決め方の例 |
|---|---|---|
| 外部サービスにつなぐキーを、何に使うか | 1つのキーが何に使われているか分からず、止めたい処理だけを止められない | キーごとに使い道を一覧にしておく。キーで接続できる先を、必要なサービスだけに絞る |
| n8nが止まったときに、どう気づくか | n8nが止まると、エラーの通知も一緒に止まり、誰も気づかない | n8nとは別の仕組みで、処理が動いたかを確かめる |
| どこで人が承認するか | AIの出力が確かめられないまま、社外や本番のシステムに反映される | 影響の大きさで、自動で反映するものと人が承認するものを分ける |
外部サービスにつなぐキーは、使い道ごとに管理する
n8nでは、メールや会計ソフトなど、つなぐ先のサービスごとにキー(認証情報)を登録します。登録したキーは暗号化して保存されます。気をつけたいのは、1つのキーを複数の用途で使い回すと、一方だけを止められなくなることです。ある処理を止めるつもりでキーを無効にすると、同じキーを使っている別の処理も止まります。できるだけ用途ごとにキーを分け、分けられない場合は、どの処理がそのキーを使っているかを一覧にしておきます。あわせて、それぞれのキーで接続できる先を、必要なサービスだけに絞ります。
n8nが止まったことに気づく仕組みは、n8nの外に置く
n8nの中にエラーを知らせるワークフローを作っても、ツールそのものが止まれば、その通知も届きません。止まったことに気づく仕組みは、n8nとは別のところで動かします。たとえば、大事な処理がその日に動いたかを別のツールの定時実行で確かめ、動いていなければ担当者に知らせたり、処理を起動し直したりします。ワークフローの側でも、失敗したときに少し間を空けて数回やり直す設定(Retry On Fail)を入れておくと、一時的な通信の失敗で止まることを減らせます。
人が承認する箇所は、影響の大きさで決める
AIの出力をどこまで自動で反映するかは、処理の種類ではなく変更したときの影響の大きさで決めます。たとえば、社内向けの文章の小さな直しは機械の確認を通れば自動で反映し、顧客や取引先の目に触れるものは、必ず人が内容を見て承認してから反映します。承認するかどうかの判断はn8nに持たせず、n8nは処理を動かすところまでにとどめます。承認する場所をあちこちのワークフローに散らさないほうが、「どこで人が確認しているか」を後から説明しやすくなります。
当社のn8n活用事例
当社では、社内のさまざまな業務をn8nで動かしています。ここでは、そのうち3つを紹介します。どれも、メールの受信や決まった時刻をきっかけにn8nが段取りを進め、書類を読む・合うかを判定する部分を生成AIが受け持ち、最後の判断は担当者がSlackのボタンで行う仕組みです。
Slackのボタンが押されたあとの処理は別のワークフローに分けている。
受注から請求書の発行まで
以前は、契約が結ばれるたびに、担当者が申込書を見ながら会計ソフトに取引先を登録し、請求書を作っていました。いまは次の流れで動いています。
- 電子契約サービスから届く締結の通知メールをメールのトリガーで拾い、IFノードで件名を見て、締結の通知だけを先へ進める
- 添付ファイルを取り出し、申込書のPDFだけを残す
- Extract from FileノードでPDFから文字を取り出し、生成AIのノードに渡して、取引先名・金額・契約期間などの項目を決まった形で抜き出させる
- 抜き出した内容を、承認ボタン付きのメッセージにしてSlackへ送る
- 担当者がボタンを押すと、Webhookノードで待ち受けている別のワークフローが動く
- 会計ソフトで取引先を探し、無ければ登録する。契約期間を月ごとに分けて、月の数だけ請求書を作る
- Slackのメッセージを「承認済み」に書き換え、スレッドで結果を知らせる
生成AIが取引先名や金額を読み違えても、手順4でSlackに出した内容を担当者が確かめ、手順5で承認するまでは請求書が作られないため、誤った請求書が出ることを防げます。これまでのところ、読み違いはほとんど起きていません。
届いた請求書の会計ソフトへの記帳
取引先から届く請求書は、受付用のメールアドレスに集めています。以前は、担当者が請求書のメールを1通ずつ開き、内容を見ながら会計ソフトに取引を入力して、請求書のPDFを証憑として添付していました。いまの流れは次のとおりです。
- 受付用のアドレスにメールが届くと、n8nが生成AIの処理を起動する。生成AIが請求書を読み取り、支払先や金額などの内容をSlackに送る
- Slackのメッセージには「登録」「修正」「スキップ」のボタンを付けている。「修正」を押すと入力欄の画面が開き、担当者が直してから登録できる
- 登録が押されると、会計ソフトに取引を登録し、請求書のPDFを証憑として添付する。PDFはメールの添付から取るか、請求書のページを開いてPDFに変換して取る
- 会計ソフトに登録済みの取引先情報と、請求書の内容が食い違うときは、「更新する」「そのままにする」を選ぶメッセージをSlackに出す
- 結果はSlackの元のメッセージを書き換えて知らせる。失敗したときも、理由をメッセージに出す
これとは別に、毎朝、見回りのワークフローが動き、処理から漏れたメールを拾い直します。
案件探しの一次判定
外部の案件紹介サービスから届く新着案件の通知を、Slackのチャンネルに集めています。以前は、担当者が1件ずつ案件のページを開いて、当社に合うかを見ていました。いまの流れは次のとおりです。
- Schedule Triggerで定時に動く。前回の確認で最後に読んだ通知の投稿時刻を覚えておき、Slackのチャンネルから、それより後に届いた通知だけを読む
- 通知に書かれた案件のページを開き、案件の内容を取り出す
- 判定の基準をまとめたファイルを読み込み、生成AIのノードに案件の内容と一緒に渡して、当社に合うかを判定させる
- IFノードで、合うと判定した案件だけをSlackに知らせ、元の通知にリアクションを付けて処理済みにする
判定の基準は、担当者の返事をもとに少しずつ直していく仕組みにしています。担当者が通知のスレッドに「この案件は規模が合わない」のように返すと、別のワークフローがその返事を読み、生成AIが理由を整理して、判定の基準のファイルに書き足します。次の判定からはその基準が使われます。
ほかにもさまざまな業務で使える
ここで紹介した3つは一例です。当社ではほかにも、採用の選考状況の管理、会議の議事録の共有、予約が入ったときの通知、メールの整理や商談の確認を行う生成AIの定時起動などをn8nで動かしています。何をきっかけに、どの順で、どこへ渡すかが決まっている業務であれば、経理・営業・採用といった部署を問わず、同じ仕組みで自動化できます。
まとめ:n8nは起動と連携に絞り、判断と承認の置き場所を先に決める
- n8nとは、ノードをつないでワークフローを作る業務自動化ツールで、クラウド版とセルフホストの2つの形で使える
- 無料で使うならセルフホストの無料版。クラウド版もクレジットカードの登録なしで試せる。有償のプランは実行回数で課金され、途中の処理の数では増えない
- 使い方は、トリガーを置く、ノードをつなぐ、試しに動かす、エラー用のワークフローを作る、「Publish」で公開する、の順に進める
- 迷ったらクラウド版で小さく始め、データの置き場所の規程や実行回数の多さが問題になったらセルフホストを検討する
- 社内の業務自動化なら商用利用の制約に当たることはまれだが、顧客向けの製品に組み込むなら利用条件を先に確かめる
- 本番で回す前に、外部サービスにつなぐキーの管理、n8nが止まったことに気づく仕組み、人が承認する箇所の3点を決める
- 当社では受注から請求書の発行、届いた請求書の記帳、案件探しの一次判定をn8nで回している。書類を読む・判定するのは生成AI、最後の判断はSlackのボタンで担当者が行う
Augueでは、n8nのような自動化ツールとAIエージェントを組み合わせ、どこを機械に任せてどこで人が承認するかの設計から、本番の運用に乗せるまでをご支援しています。ご興味がある方は是非ご相談ください。
よくある質問
n8nを使い始めて、最初の業務が動くまでどれくらいかかりますか?
日次の集計結果をチャットへ送るような、つなぐ先が2〜3個の処理なら、クラウド版で数時間から数日で動かせます。時間がかかるのは画面の操作ではなく、つなぐ先のシステムで権限を払い出してもらう手続きと、失敗したときに誰へ知らせるかを決める作業です。社内の承認フローが長い会社では、この手続きの日数を先に見積もっておくと予定がずれにくくなります。
プログラミングの経験がない担当者でも扱えますか?
画面上でノードを並べる操作は、経験がなくても覚えられます。ただ、つなぐ先のAPIの仕様を読む、受け取ったデータの形を整える、失敗の原因をログから探す場面では、JSONの読み方や簡単な式の書き方が要ります。最初の数本は、仕組みを分かっている人が横について一緒に作り、その後の改修を担当者に移す形にすると、属人化を防ぎながら覚えられます。
クラウド版で始めたあと、セルフホストへ移せますか?
移せます。作ったワークフローは定義ファイルとして書き出し、別の環境で読み込めます。ただし、認証情報は移行先で入れ直すのが基本で、外部から呼び出されるWebhookのURLも変わります。呼び出し元のシステム側の設定変更が必要になるため、移行の日は、どの処理がどこから呼ばれているかを一覧にしてから切り替えます。
情シスの審査では、何を聞かれることが多いですか?
多いのは、業務データがどこを通りどこに保存されるか、認証情報を誰が見られるか、実行の記録がどれだけ残るか、担当者が異動したときに誰が引き継ぐか、の4点です。クラウド版ならデータの保存先の地域と契約条件、セルフホストなら置き場所のサーバーと更新の担当者を答えられるようにしておくと、審査が進みやすくなります。
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