SNS運用のどこに時間がかかっているか

企業アカウントの運用でかかる時間は、投稿文を書いている時間だけではありません。何を投稿するかの題材を探し、社内の担当者に内容を確かめ、媒体ごとに文面を作り直し、画像を選び、投稿する日時を決めて予約枠へ入れる。1本の投稿が公開されるまでに、性質の違う作業がいくつも挟まります。

この工程を分けると、時間の使われ方が見えてきます。題材を探す作業は、社内の動きや資料を追い続ける必要があり、担当者が他の業務を抱えていると滞ります。文面を作る作業は、1本あたりは短くても本数が増えると積み上がります。媒体ごとの作り直しは、内容が同じでも手を動かす量が本数分だけ増えます。確認の工程は、確かめる相手が別の部署にいると待ち時間になります。

「SNSの投稿をAIに書かせる」とだけ決めて着手すると、この中の文面を作る部分だけが対象になります。ところが運用が止まる原因は、文面が書けないことよりも、題材が出てこないことや確認が回らないことにあるのが実情です。工程ごとに詰まっている場所を見てから、どこを自動化の対象にするかを決めます。工程を機械の処理とAIと人の承認に仕分ける考え方は「AIエージェントにどこまで任せるか」で扱っています。

工程ごとに任せられる範囲を決める

投稿ができるまでの工程を並べ、どこまでを自動処理に寄せられるかを整理します。境目になるのは、正解が過去の実績から決まるか、その場の状況で決まるかです。

工程 自動化に寄せられる範囲 人が持つこと
題材を集める 社内の資料置き場や更新情報から候補を拾い、投稿できそうな形に要約して並べる 出してよい内容かの判断。社外に出せない案件の除外
投稿の素案を作る 題材から要旨を組み立て、過去の投稿の言い回しに合わせた文面を出す 伝えたい点がずれていないかの確認
媒体ごとに整える 文字数の範囲、改行の入れ方、リンクの置き場所、タグの付け方を媒体ごとの設定に沿って変換する 設定そのものを決める。媒体側の仕様が変わったときの更新
画像を指定する 既存の素材から候補を挙げ、必要な差し替え箇所を示す 使ってよい素材かの判断。新規に作る場合の指示
公開の可否を決める 確認すべき項目を並べ、引っかかった箇所を示す 可否の判断そのもの
予約投稿を登録する 承認された下書きだけを決まった枠へ登録し、登録結果を記録する 投稿する時期をずらすかどうかの判断
反応を記録する 公開後の数値を集め、投稿の型と一緒に残す どの型を続けるかの判断

表の上から4つは、材料がそろっていれば手順が決まります。反対に、可否の判断は自動化の対象から外します。社外に出してよいかどうかは、投稿の文面だけでは決まらず、案件の進み具合や取引先との関係といった、投稿の外にある事情で決まるためです。

予約の登録を自動処理に含めるかは、運用の形で分かれます。承認を経た下書きだけが登録される構成なら、登録そのものは機械的な作業です。ただし、承認と登録の間に時間が空く運用では、承認した時点では問題がなかった内容が、公開の直前に出しにくくなることがあります。登録の前にもう一度状況を見る運用にするか、公開の直前に取り下げられる手順を用意しておきます。

題材の収集から予約投稿までの流れと、担当者が確認する位置 社内の資料や更新情報から題材の候補を集め、過去の投稿を参照して素案を作り、媒体ごとの設定に沿って文面を整え、画像の候補を添える。ここまでを自動処理で行い、担当者が公開の可否を確認したうえで、承認された下書きだけを予約枠へ登録する。公開後の反応は記録して次の題材の選び方へ戻す。 機械が処理する 人が判断する 1. 題材を集める 2. 素案を作る 3. 媒体ごとに整える 4. 画像を添える 6. 予約枠へ登録 5. 可否を確認 資料置き場と更新情報から候補 過去の投稿に言い回しを合わせる 文字数と改行を設定に沿って変換 既存の素材から候補を挙げる 承認された下書きだけを流す 確認項目に沿って担当者が判断 公開後の反応を記録する 投稿の型と一緒に残し、次の題材の選び方へ戻す
確認の工程を1か所に集め、そこを通った下書きだけが予約枠へ進む形にします。
確認を挟まずに公開まで通す経路は作りません。

確認を1か所にまとめているのは、担当者が見る場所を散らさないためです。素案の段階と公開の直前で二度確認する運用にすると、どちらでも見られていない項目が生まれます。

過去の投稿と社内資料をどう読ませるか

生成した文面が自社の投稿らしく読めるかどうかは、参照させる材料でほぼ決まります。指示文に「親しみやすい調子で」と書き足すより、過去の投稿をそのまま読ませる方が近づきます。ただし、過去の投稿を全部渡せばよいわけではありません。

続けたい投稿を選んで渡す。 アカウントの過去の投稿には、方針が変わる前のものや、担当者が代わって調子が違うものが混ざります。すべてを渡すと平均的な文面が出てきます。今後も同じ形で出したい投稿を選び、それだけを参照先にします。選ぶ作業は運用の担当者にしかできませんが、一度やれば後は追加していくだけです。

投稿の型ごとに分けて持つ。 告知、資料や記事の紹介、イベントの報告、社内の様子といった具合に、投稿はいくつかの型に分かれます。型によって文面の組み立てが違うため、まとめて渡すと混ざります。型ごとに参照先を分け、素案を作るときにどの型かを先に決める構成にします。

題材の供給元を決めておく。 文面の材料になるのは、社内の資料置き場にある公開済みの資料、自社サイトの更新、告知の予定表などです。どこを見るかを決めておかないと、題材が尽きたときに投稿が止まります。社内の文書をまとめて読ませる際の絞り込み方は「生成AIに社内データを読ませる前の準備」が参考になります。

渡さないものを決める。 未公開の案件を含む資料、社外秘の表示がある文書、取引先の名前が入った記録は、参照先から外します。素案の材料に入ってしまうと、担当者が気付かない限りそのまま文面に混ざります。参照先は置き場所の単位で指定し、置き場所ごとに出してよいかを決めておくと管理しやすくなります。

用語の書き方を一覧で持つ。 自社の製品名やサービス名の表記、使わない言い方、社名の後に付ける表記といった決まりは、過去の投稿から読み取れないことがあります。一覧として別に持ち、文面を作るときに必ず参照させます。

どれだけの過去データが必要か

必要な本数を一律に出すことはできませんが、目安の立て方はあります。見るのは総量ではなく、型ごとの本数です。投稿の型が4つあるなら、型ごとに手本になる投稿が数本ずつ要ります。1つの型に1本しかないと、その1本の言い回しをなぞった文面しか出てきません。

型ごとの手本が足りない場合、着手の順序を変えます。手本がそろっている型から自動化を始め、足りない型は当面これまで通り手で書きます。書いたものを手本として追加していけば、対象の型が増えていきます。最初から全部を対象にしようとして、手本の少ない型で使えない下書きが出続けると、仕組み全体が使われなくなります。

過去の投稿が取り出せない場合もあります。運用ツールを乗り換えていたり、担当者の手元にしか記録が残っていなかったりするときです。その場合は、これから出す投稿を記録する形を先に決め、手本がたまるまで自動化の対象を題材の収集に絞ります。

媒体ごとに文面をどう変えるか

複数の媒体を運用している場合、同じ内容でも出し方が変わります。ここを自動化の対象にすると、本数分の作り直しがなくなります。

気を付けるのは、媒体ごとの決まりを指示文の中へ直接書かないことです。媒体側の仕様は変わります。文字数の上限、リンクの扱い、画像の枚数といった条件は設定として外に出し、変更した日付を残します。記事や手順書に書き写すと、古い条件のまま動き続けます。

媒体の性質 文面の作り方の違い 設定として持つ項目
短い文が中心で流れが速い 要点を先頭に置き、詳しい説明は外部のページへ送る。1回で伝えきろうとしない 文字数の上限、リンクの置き場所、タグの数と付け方
画像が主役 画像で伝わる内容を文面で繰り返さない。文面は補足と誘導に寄せる 画像の枚数と縦横比、文面の長さの目安、リンクの扱い
仕事の文脈で読まれる 背景と目的を先に置き、簡略な表記や内輪の言い回しを避ける 文字数の目安、敬体の指定、使わない表記の一覧
長い文が読まれる 見出しを立てて段落を分ける。1本で完結する分量にする 段落の構成、見出しの有無、末尾に置く導線
動画や音声に添える説明 中身の要約と、どこに何があるかの案内を中心にする 説明文の長さ、目次の形式、関連リンクの並べ方

媒体ごとに別々の文面を作るか、1つの素案から変換するかは、運用の本数で決めます。本数が少なければ素案から変換する形で足ります。本数が多く、媒体ごとに読者層も違うなら、題材の段階から分けた方が結果的に手直しが減ります。

同じ内容を複数の媒体へそのまま流すと、どの媒体でも中途半端な文面になります。変換する形を採る場合でも、媒体ごとに何を削り何を足すかを設定として書いておきます。

公開前に人が確認する項目

自動化した運用で事故が起きるのは、確認すべき項目が担当者の頭の中にしかないときです。確認の観点を一覧にして、下書きと一緒に毎回出す形にします。項目のうち機械で検出できるものは、引っかかった箇所を示すところまで自動処理に寄せられます。

確認する項目 見るところ 機械で検出できるか
事実と違う記載がないか 日付、場所、数量、製品の仕様、人の役職 検出できない。元の資料と突き合わせて担当者が見る
数値に出典があるか 文面に入っている数値の根拠 元の資料に同じ数値があるかの照合までは自動でできる
社外に出せない内容が混ざっていないか 未公開の案件、取引先の名前、社内限りの資料からの引用 決めた語の一覧との照合で候補は挙げられる。可否は担当者が決める
固有名詞と表記が正しいか 社名、製品名、人名、肩書き 表記の一覧との照合で検出できる
画像を使ってよいか 権利の所在、人が写っている場合の許諾、使用期限 検出できない。素材の管理台帳を担当者が確認する
誤解を招く表現がないか 断定の度合い、比較の書き方、効果をうたう表現 使わない表現の一覧との照合で候補は挙げられる
リンク先が正しく開くか 遷移先のページ、公開状態、対象の期間 到達の確認まで自動でできる
出す時期として適切か 世の中の出来事との重なり、社内の他の発表との前後 検出できない。担当者が当日の状況を見る
投稿先と日時が合っているか アカウント、予約の日時、媒体の取り違え 登録の内容と承認の内容の照合で検出できる

機械で候補を挙げられる項目でも、可否の判断は担当者に残します。語の一覧との照合は、一覧に無い言い方をすり抜けます。検出できなかったことは、問題がないことの証明になりません。

一覧の中で運用の負担になりやすいのは、出す時期の確認です。予約投稿は、登録した後は担当者の手を離れます。世の中の出来事と重なったときに取り下げる手順と、誰がその判断をするかを決めておきます。判断する人が休みの日に投稿が出る枠を作らない、という運用の決め方もあります。

確認した記録は残します。誰がいつどの下書きを承認したかが分かれば、後から問題が起きたときに、どの工程を直すべきかを切り分けられます。記録が無いと、自動処理の側の問題なのか確認の抜けなのかが分かりません。人が承認を持つ設計の考え方は「AIエージェント開発の進め方」でも扱っています。

使われる仕組みにするための測り方

投稿の反応が増えたかどうかは、この仕組みの成果としては切り出せません。反応は題材の内容や出した時期にも左右され、自動化とは別の要因で動きます。測るのは、作業の側です。

1本あたりの作成時間。 着手前に、題材を探す時間、文面を書く時間、媒体ごとに直す時間、確認を取る時間を分けて数本分記録します。着手後に同じ区分で測ると、どの工程が短くなったかが分かります。

下書きがそのまま使われた割合。 生成した下書きのうち、担当者が手を入れずに承認した割合です。この割合が低いまま変わらないなら、参照させている過去の投稿が足りないか、型の分け方が実際の運用と合っていません。

確認で止まった件数と、その理由の内訳。 止まった理由を記録しておくと、同じ理由が続く箇所が分かります。社外秘の内容が混ざるのが続くなら参照先の絞り込みを、表記の誤りが続くなら用語の一覧を直します。

投稿できた本数。 運用が滞る原因が題材の不足にあった場合、作成時間よりも本数の方に先に表れます。

短くなるのは、題材を並べる工程と、媒体ごとに作り直す工程です。確認の工程は残り、自動化しても短くなりません。そのため、運用している媒体が多いほど、また投稿の本数が多いほど、全体に占める削減の割合が大きくなります。逆に、月に数本しか投稿しない運用では、仕組みを保つ手間の方が上回ることもあります。効果の測り方と継続の判断の組み立ては「AI導入の効果測定」で扱っています。

着手の順序

一度に全部を組もうとすると、媒体との接続や権限の手配で止まります。範囲を狭めて進めます。

  1. 投稿の型を書き出し、型ごとに手本になる過去の投稿を選ぶここが後の工程の土台になります。選ぶのは運用の担当者です
  2. 題材の供給元を決め、候補を並べるところまでを作る文面の生成はまだ入れません。候補が毎週出てくる状態になるだけで、滞りの原因が1つ減ります
  3. 手本がそろっている型から、1つの媒体向けの素案を作る下書きがそのまま使われる割合を見て、参照先と型の分け方を調整します
  4. 確認する項目の一覧を作り、下書きと一緒に出す機械で検出できる項目から順に自動処理へ寄せます
  5. 他の媒体への変換を足す媒体ごとの条件を設定として外に出し、変更した日付を残します
  6. 承認された下書きを予約枠へ登録する部分をつなぐ取り下げる手順を決めてから接続します

先に用意しておくのは、過去の投稿の記録、用語と表記の一覧、参照してよい資料の置き場所、そして運用を直し続ける担当です。特に過去の投稿の記録は、後からさかのぼって作ることが難しく、残っていない期間は取り戻せません。自動化を始める前から記録の形を決めておくと、手本を選ぶ段階で使えます。

まとめ:SNS運用の自動化を設計するときの要点

  • 投稿ができるまでの工程を、題材の収集、素案の作成、媒体ごとの整形、画像の指定、可否の確認、予約の登録、反応の記録に分け、工程ごとに任せる範囲を決める
  • 詰まっている場所は文面を書く工程とは限らない。題材が出てこない、確認が回らないといった原因を先に見てから対象を決める
  • 文面の調子は参照させる材料で決まる。今後も続けたい過去の投稿を選び、投稿の型ごとに分けて渡す
  • 必要な過去データは総量ではなく型ごとの本数で見る。手本がそろっている型から始め、足りない型は当面手で書いて手本を足していく
  • 媒体ごとの文字数や画像の条件は仕様が変わる。指示文へ直接書かず、設定として外に出して変更した日付を残す
  • 公開前の確認は項目を一覧にして毎回出す。機械で検出できる項目は候補を挙げるところまで寄せ、可否の判断と記録は担当者が持つ
  • 予約投稿は登録後に手を離れる。取り下げる手順と、判断する人を先に決めておく
  • 測るのは反応の数ではなく、1本あたりの作成時間、下書きがそのまま使われた割合、確認で止まった理由の内訳、投稿できた本数

Augueでは、社内の資料や過去の記録を材料にして下書きを組み、確認の工程を残したまま公開までつなぐAIエージェントの開発に対応しており、どこまでを自動で出しどこに担当者の判断を残すかの線引きから一緒に検討できます。自社のSNS運用を対象にできるか判断したい方は、是非ご相談ください。

まずは現状をお聞かせください

弊社では具体的な要件が固まっていない段階でも、無料相談で現状をお聞きしていますので、お困りの際はご相談ください。

無料相談を予約する →

よくある質問

予約投稿ツールに付いている文章生成の機能を使うのと、どう違いますか?

ツール側の機能は、入力した要旨をその場で文章にするところまでを担います。過去の投稿を読んで言い回しを揃えたり、社内の資料から題材を拾ったり、確認済みの下書きだけを予約枠へ流したりといった前後の工程は含まれません。投稿が週に数本で、言い回しの揺れが問題になっていないなら、ツールの機能で足ります。自前で組む価値が出るのは、題材の供給と確認の記録まで一続きにしたい場合です。

アカウントへの投稿権限を自動処理に渡してよいか判断できません。

権限は投稿の実行に必要な範囲だけを発行し、確認を通った下書きしか投稿の処理へ渡らない構成にします。設定の変更やアカウント情報の編集まで含む権限は避けます。権限の分け方が媒体側で用意されていない場合は、予約の登録までを自動で行い、公開の実行は担当者の操作に残す形も選べます。どちらにしても、いつ何を投稿したかの記録を自動処理の外側に残しておきます。

運用の担当が1人しかいない体制でも回せますか?

回せますが、確認の工程がその1人に集中するため、休みや繁忙で止まる前提の作りにしておきます。承認できる人をもう1人決めておく、予約の枠を担当者が対応できる時間帯に寄せる、承認が下りなかった下書きは翌週へ送るといった逃げ道を運用の側で用意します。自動処理の側を増やしても、承認する人が1人という制約は変わらないため、出す本数はその人が確認できる量に合わせて決めます。

投稿の反応が増えるかどうかは、この仕組みで判断できますか?

反応の数は投稿の中身だけでなく、題材の時期や表示の仕組みにも左右されるため、自動化の成果としては切り出せません。判断できるのは、同じ本数を出すのにかかる時間と、下書きがそのまま使われた割合です。反応を伸ばしたい場合は、反応が良かった投稿の型を記録して題材の選び方へ戻す運用を別に組み、時間の削減とは分けて見ます。